SDカードのリスク
近年、多くのネットワークカメラにおいてSDカードまたはマイクロSDカードの挿入口があり、簡単にSDカードへ録画ができるようになった。
しかし、ネットワークカメラの映像をSDカードだけに録画する場合は、リスクがあることを認識しておかなければならない。
個人用途の場合は、手軽に録画ができてよいと思うが、法人用途の場合は注意が必要だ。
仮想の事例をもとに説明しよう。
トラブルの例
ケーススタディ:街の防犯対策
防犯意識の高まりを受けて、通学路や路地にネットワークカメラを取り付けたいというニーズが高まっている。例えば、外灯などにカメラを取り付けるケースだ。
このような環境下の場合、配管や配線経路がなく通常のようにLAN配線ができないことも多い。また、携帯電話の回線を利用して録画する方法もあるが、この場合、キャリアの回線費用のランニングコストが大きくなってしまう。そこでユーザーが思い付いたのがSDカードへの録画だ。ネットワークカメラ本体にSDカードを差し込み録画を行ったのだ。
●トラブル発生
しかし、運用が開始されてしばらく経過した後に、近隣で事故が発生したため映像を閲覧しようとしたところ「途中で録画が停止していること」が発覚した。運用開始後、SDカードがうまく動作していなかったのだ。後ほど、施工業者を呼び、SDカードの交換作業を行ったのだが、SDカードが安価なものを利用していたことが発覚した。
●SDカードの寿命と耐久性
あくまでも一般論だが、SDカードのフラッシュメモリの素子によって書き込み回数の上限がある。SLC(Single Level Cell)チップは10万回、MLC (Multi Level Cell) チップは1万回、TLC (Triple Level Cell) チップは1000回とされている。高速かつ継続的に書き込みを行うネットワークカメラシステムの場合、SDカードが消耗する可能性が高い。
では、どのような対策があるのか?
では、どうすれば録画データを保持できるのか考える。
対策①:メーカー検証済の耐久性の強いSDカードを利用する
*まずは、各カメラメーカーで推奨しているSDカードを利用することが重要である。
各社(ソニー/パナソニック/AXIS)の掲載ページを貼っておく。
対策②:各メーカーの設定手順に従う
*各メーカーや機種によってSDカードへの設定手順や注意事項が異なるため十分に注意して設定作業を行う必要がある。例えば、AXIS社の場合、フォーマットする際に<ext4(recommended)>形式を推奨している。
※また、パナソニック社では親切にもSDカードごとの寿命の目安も公開している。
下記を目安として定期的な交換が必要だ。
対策③:屋外用のレコーダーを利用する。
*SDカードに録画する方法以外にも、屋外用に設置するレコーダーやレコーダー一体型のカメラが存在する。いくつか紹介しよう。
<ROD社 Outdoor-Viostor>
*屋外用キャビネットの中にレコーダーやHUB、モニタを格納できるセットモデルである。
モニタで定期的に録画が正しくされているのか確認することが可能だ。
<TOA社 レコーダー一体型カメラ>
*TOA社では屋外用カメラ本体に、レコーダーや無線機、タイムサーバーを格納したモデルが存在している。知人から聞いた話では、発売当時、かなりヒット商品だったとのことだった。
<パナソニック社 SDカードレコーダー>
*パナソニック社からはカメラ本体にSDカードを挿入するのではなく、別途、SDカードを差し込んで録画するレコーダーもリリースしている。一般的なネットワークカメラがカメラ本体にブラウザで接続して再生するケースが多いのに対して、このレコーダーは、専用ビューワーがSDメモリーカードに自動ダウンロードされ、PCに別途インストールしなくても使用可能となるところである。
※ただし、原則としてインターネット経由で外部からレコーダーに接続することはできない。
最後に
これ以外にも、屋外用のレコーダーは様々な機種が存在しているほか、近年では、クラウド型のサービスも充実してきている。
ただし、いずれの場合もレコーダーやネットワーク機器の故障により録画が停止するリスクがあるため、屋外に装置を設置する場合は「ユーザー自身で定期的に稼働確認すること」が最も重要である。
また、これは筆者の個人的な考えであるがSDカード録画だけではやや不安があるため、「SDカード以外の録画方法(屋外用レコーダーやクラウドサービス)でデータを残しておき、カメラのネットワーク通信に異常が発生した場合に、バックアップ的にカメラ本体のSDカード録画に切り替える運用」が望ましいのではないかと思う。PoE給電の場合は上記の仕組みは構築できないが、別途、カメラに電源を供給している場合は、LAN断線時のみSDカード録画を行うことができるモデルも存在する。
SDカードは手軽に録画ができる一方で、リスクがあることも認識して欲しい。