ネットワークカメラにおける故障のリスク
近年、ネットワークカメラの市場の広がりを受けて、様々なシーン(設置場所)でネットワークカメラが採用され、設置されるようになった。例えば、河川や山間部での災害監視や観光地の景色なども公開されるようになった。
一方で、上記のような特殊環境にネットワークカメラを設置した場合、実は、故障発生時のリスクも高くなることを、ユーザーおよびベンダーともに理解しておく必要がある。例えば、10mくらいの高所にネットワークカメラを設置した場合、その交換作業においても作業員だけでなく、高所作業車が必要となるため、多くの修理費用が必要となるのだ。
障害発生時の作業として
ネットワークカメラシステムに何らかの不具合が発生した場合、まずは『障害切り分け』という作業が必要となる。これは、ネットワークカメラシステムのどの部分で障害が起きているのかを特定する作業である。
カメラ本体の故障なのか、それともPoE HUBなどのネットワーク機器の問題なのか、レコーダーや表示装置の問題なのか、不具合の原因を探し当てる必要があるのだ。もし、障害切り分けの結果、カメラ本体の故障だと想定される場合、カメラの交換作業が必要となる。
設置時と同じように脚立または高所作業車を用いて、カメラを取り外ししなければならない。その場で新しいカメラに交換できればまだ良いが、送付修理の場合、いったんカメラを取り外しして、メーカーに送付し、修理完了後にまた設置工事が必要となる。作業費が2回分必要となるのだ。
保守などに加入していれば、これらの作業を保守契約の範囲内でベンダーのサービスを受けられる可能性もあるが、保守契約にまったく加入していない場合、都度、修理費用や長期の修理期間が必要となることもあるのだ。
ユーザーはシステムを導入する際に、単に初期コストだけを比較検討するのではなく、中長期的なコストや修理費用のコストも想定しておく必要がある。
修理費用を抑える工夫として
①保守契約に加入する
故障発生時の費用を抑える方法としては、まずは、保守などのアフターサービスを受けられる契約を締結しておくことである。ベンダーや製品によっては、『導入時だけ購入や契約ができるもの』があり、導入後しばらく期間が経っていた場合、保守に加入することが出来ない場合もあるため、注意が必要だ。
②信頼性の高い製品を導入する
故障のリスクを抑えるコツとしては、より信頼性の高い製品を導入することも重要である。近年では、ネットワークカメラの市場の広がりを受けて、非常に多くのメーカーやベンダーの製品がリリースされている。
その価格や品質も様々なものがあり、故障が発生しにくいものもあれば、残念ながら故障が多い製品も存在している。
同じメーカーの製品であっても、『廉価モデル』と高価な『上位モデル』では、故障の頻度が大きくことなることもある。カタログや仕様書には故障率などは記載されていないため、実際の故障の頻度や故障時の対応方法については、導入前にベンダーに相談しておく必要がある。
基本的には故障率などは公表されているものではないが、やはり『信頼性が高い』と言われる製品は一般的に故障率が低い傾向がある。一方で『信頼性に課題がある』と言われる製品は、故障率が高い可能性がある。
初期コストだけでも見てしまうと、どうしても『安い製品』に注目してしまいがちであるが、中長期的なコストを考慮すると、信頼性の高い製品を導入した方が望ましいケースも考えられる。
③故障時にメンテナンスしやすい場所に設置する
メンテナンスしやすい場所にカメラを設置することも重要な対策の1つである。冒頭のように5m~10mを超えるような高所にカメラを設置した場合、障害時の施工費用が高くなるため、リスクがある。
一方で、3m程度の比較的、低い位置にカメラを設置した場合、脚立でカメラの交換ができるため、障害時の施工費用も低く抑えることができるだろう。
④HDD(ハードディスク)の消耗を考慮する
レコーダーまたはサーバーのHDD(ハードディスク)の消耗も、考えるべき事項の1つである。どのレコーダーであっても、HDDは経年劣化し、故障率が高くなる。
可能でれば、HDDは定期的に交換することが望ましい。なかなかコストや運用面でHDDを交換できない場合は、できるだけ早めにレコーダー本体を交換するなどの対策が必要である。
近年では、これらのHDDの消耗による故障のリスクを軽減するため、クラウドサービスを選択するユーザーも増えている。クラウドサービスであればHDDの消耗を考慮する必要がない。カメラ台数が多くない場合は、クラウドサービスを選択することも良いだろう。
まとめ
*ネットワークカメラは様々な用途での活用が進んでいるが、導入時は初期コストだけでなく、故障時の修理費用などランニング費用も想定しておく必要がある。
*対策として、保守契約に加入したり、より信頼性の高い製品を採用するなど、工夫しておくことが望ましい。