潮風の影響で機器が錆びる
ネットワークカメラを屋外に設置する場合、注意しなくてはならないのが、塩害への対策である。
カメラの設置場所が港湾などの場合、ネットワークカメラ本体やその他のネットワーク機器等が錆びてしまったり、故障してしまうリスクが高くなる。
ネットワークカメラを海辺に設置する場合、耐塩性能について考慮しなければならない。
塩害への対策がきちんとできていない場合、錆びてしまい、障害の原因となってしまう。カメラ本体だけでなく、ネットワーク機器やケーブル、配管など、あらゆる部材で塩害への対策を考慮しなければならないのだ。
では、ネットワークカメラの導入を検討するユーザーが購入仕様書を作成し、いくつかこベンダーに見積依頼を行う場合、『ネットワークカメラシステムは耐塩仕様とすること』などと記載すればよいかというと、そのように簡単な問題ではない。
むしろ、安易に一行だけ文言を追加してしまうと、適切な比較/検討が難しくなる可能性がある。
それは、なぜか。
『耐塩対策=錆びない』というわけではない
まず、誤解がないように説明しなければならないのが、耐塩仕様だからといって、錆びないというわけではないということである。
例えば、錆びないようにステンレス製の金具を利用してたとしても、『絶対に錆びない』というわけではなく、『錆びにくい』という表現の方が正しい。
仮に、以下のネットワーク構成のようなシステムがあったと仮定する。
塩害への対策を厳格に行う場合、カメラ本体だけではなく、配管や屋外用の収納ボックスなど、あらゆる部材を定期的に交換しなければならないのだ。
例えば、一年毎に各部材を交換することになるが、一般的なユーザーで、毎年、システムのリプレイスを行うことはコスト面でも、なかなか難しいだろう。
塩害への対策はどこまで実施するべきかという基準を定めるのはなかなか難しい問題なのだ。
なお、『海岸より0~200m程度が重耐塩、海岸より200m~20km程度の範囲が耐塩』という基準があるものの、実際には設置する環境によって、錆びやすさはまちまちである。
画一的な判定基準を設けるのは難しいのだ。
対塩はコストとのバランス
カメラについて
筆者は先ほど、塩害への対策としてステンレス製の部材を使う方法があることを説明したが、一般的にステンレス製の部材は高価だ。
例えばアクシスのカメラを例に紹介するアクシスコミュニケーションズには以下のモデルのようにステンレス製のモデルが存在している。
塩害や化学薬品などの影響も受けにくく、耐環境性能は高い。
しかしながら、非常に高価だ。カメラ一台であればそれほど影響はないが、このモデルを多数設置するとなると、コストが大きくなってしまう。
もし、コストを抑えたいユーザーは以下のような屋外用のカメラを選定する方法もある。
このカメラの場合、外側はプラスチック製であり、耐塩に対する仕様ではない。
しかしながら、NEMA4Xという防水および耐腐食性能を保育している。実運用としては、これらのモデルを海岸付近に設置するケースも往々にして存在している。
実際にどこまでの塩害対策を行うのかは、設置環境やユーザーのコスト次第なのである。
配管や配線について
また、カメラと同様にコスト面に直結するのが配管やケーブルである。例えば、厳格な塩害対策をしようとすると、ステンレス製の金属管で配管しなければならない。
しかしながら、繰り返しになるが、ステンレス製の部材は高価だ。
数メートルの配管であれば問題ないかもしれないが、仮に100mの配管や配線を行う場合、それだけで膨大なコストとなる。
実際には、ステンレス管ではなく、プラスチック製の部材で施工するケースも多いようだ。
収納ボックスについて
屋外に設置する収納ボックスも塩害対策を行わなければならない。
これもステンレス製のボックスとプラスチック製のボックスが存在している。
まとめとして
これまで説明したように、各部材のすべてをステンレス製にしようとした場合、非常に部材費が高くなってしまう可能性がある。
単に『ネットワークカメラシステムは塩害対策を行うこと』と記載しただけでは、ベンダーによって解釈や対策の方法に大きな差が生まれてしまう可能性があるのだ。
実際には、ユーザーは導入コストと比較しながら、どこまでの塩害対策を行うべきか、ベンダーと相談しながら、システム設計を進めなければならないのだ。
場合によっては、各部材の仕様も定義しないと、公正な競合比較が難しくなる可能性がある。
なお、最後に誤解がないよう補足しておく。筆者は『塩害対策はコストとのバランスである』と説明したが、コストがないからといって塩害対策をしなくてもよいというわけではない。
例えば、高所にカメラやプルボックスを設置する場合、錆びによって、落下事故が起きてしまう可能性もある。塩害対策をどこまで行うべきかについては、事故発生などの総合的なリスクを踏まえてシステム設計をしなければならないのである。