私はネットワークカメラに詳しくても、防犯のことは知らない
自分で言うのもあまりよくないが、筆者はネットワークカメラにはそれなりに詳しいつもりである。少なくとも、一般の方と比較すると、ネットワークカメラに携わる時間は圧倒的に長い。
しかしながら、実は「防犯についての知識は不十分」である。
割と誤解されていることであるが、「ネットワークカメラに詳しいからといって防犯にも詳しい」というわけではない。筆者のようにネットワークカメラに詳しくても、防犯の知識は疎いケースもある。
また、その逆のパターンもある。防犯に関してプロフェッショナルだからといって、ネットワークカメラに詳しいわけではない。
下の図をご覧いただきたい。左側の赤い丸がネットワークカメラの知識である。そして、右側の青い丸が防犯の知識である。
当然、重なっているところもあれば、重なっていない領域も存在するのだ。
どういうことか具体的に説明しよう。
ネットワークカメラに必要な知識
ネットワークカメラを販売または導入するユーザーにとって、最もベースとして必要な知識はITに関するものである。
ネットワークに関する基礎的な考え方や光学の知識、サーバーやPCなどのハードウェアの知識、録画ソフトウェアなどの知識が必要となる。
ネットワークカメラは多くの場合、防犯対策を目的として導入されるケースが多いのは事実だ。しかしながら、近年では防犯対策だけでなく、マーケティングや業務効率の向上など、その用途は多岐に渡る。防犯対策としてのカメラの知識は必要であるが、それ以外のIT知識が重要となるのだ。
筆者も、どこにどのようなカメラを設置すると最適な映像を取得できるのか、ある程度のイメージはすることはできる。しかしながら、犯人の心理的行動や不審者の特徴など、防犯に関わることはさすがにわからないのだ。
防犯対策で必要な知識
一方で、防犯対策という広い視点で見た場合、ネットワークカメラもその一つの要素に過ぎない。
防犯対策は、防犯設備と呼ばれるセンサー類や人的な対策など、様々な概念によって構成される。ネットワークカメラに詳しくても犯罪を防ぐことは困難だ。
ネットワークカメラを設置するよりもドアに鍵をかけた方がよい場合もある。また、人海戦術で警備員を配置させた方が効果が高い可能性もある。あるいは、防犯センサーや警報機を設置した方が良い場合もある。
ネットワークカメラはあくまでも問題が発生した後のレビューを行うツールとしては活用することが可能であるが、犯罪の抑止力としては、必ずしも高い能力を持つわけではない。
繰り返しになるか、防犯対策におけるネットワークカメラは一つのツールに過ぎないのだ。
相談するベンダーを考えよう
これまで、ネットワークカメラと防犯対策の概念の違いについて説明した。筆者が何を伝えたかったかというと「相談する相手をきちんと考えよう」ということである。
例えば、食品工場で食の安全性や工場の業務効率を上げたいという課題があったとする。この場合の相談先として警備会社を選択することは、間違えてはいないが、適切ではないと筆者は考えている。
食品工場で食の安全性や業務効率を上げたい場合、警備会社よりもSIerなどに相談した方が良いだろう。場合によってはネットワークカメラ以外の解決方法も見つかるかもしれない。
一方で工場の防犯対策を強化したいと考えているユーザーがSIerに相談を持ち掛けるのもナンセンスだ。
やはり、防犯対策を強化する場合、一般的には警備会社に相談した方がより深いナレッジを取得できる可能性が高い。
このように、単にネットワークカメラといっても、その利用方法は多岐に渡るため、導入に向けて相談する相手も変えていかなければならない。
餅は餅屋といったように、ベンダーにも得意分野あるいは不得意分野があるので、相談相手を見極める必要があるのだ。