ネットワークカメラ推進会

Network camera promotion and communication

グラフィックボードとアプリケーションの相性問題

高性能なグラフィックボードを付けたはずなのに…。

 ネットワークカメラのシステム設計者を度々苦しめるのが、グラフィックボードとビューワーアプリケーションの相性の問題である。

 

 例えば、ROD社の推奨スペックPCはホームページ上に以下のように記載がある。

 ※19年2月11日現在


OS Windows 7Pro/ 8.1Pro/ 10Pro
CPU Intel Core i7 2.8GHz以上
メモリ 4~8GB程度
ビデオカード NVIDIA® GeForce® GTX1060 相当
ネットワークアダプタ 1000Mbps程度
グラフィック解像度 1920×1080ピクセル以上

 

  例えば、上記をみると、グラフィックボードとしてGTX1060相当が推奨となっており、単純に考えれば、これより上位のモデルを選択すれば、システム設計上、間違いがないと思われるかもしれない。しかしながら、グラフィックボードとアプリケーションの相性はそれほど単純なものではない。

 

 これは、ROD社だけに限らず、どのメーカーのビューワーアプリケーションや映像編集ソフトにも言えることであるが、グラフィックボードとアプリケーションには必ず相性という問題がある。

 どんなに検証が取れているグラフィックボードであっても、ドライバーのバージョンアップなどにより若干、仕様が変わってしまうため、完全に検証ができるとういうことは考えにくい。そのため運が悪いと、思わぬ動作不良を引き起こしてしまうことがある。

 

 例えば、グラフィックボードは現在、大きく2社の開発メーカーが存在している。もはや説明不要かもしれないが、NVIDIAAMDの2社である。NVIDIAの代表的なグラフィックボードは、Geforce GTXQuadroなどである。Geforceはゲーム向きでQuadroは3D CADなどに向いている認識だ。一方、AMD代表的なグラフィックボードはRADEONなどである。

 そして、Geforce GTXシリーズであっても、製造元がNVIDIAというわけではなく、実際の製造はMSIやASUSなどが行っており、ファブレスの形式がとられている。

 

 ※なお、筆者も自作PCなどに明るいわけではないため、この分野の専門家ではないことをご理解いただきたい。

 

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よくあるトラブルの事例

 例えば、仮にGeForce GTX 1060 3 GBが搭載されたPC と RADEONで3GBのGPUが搭載されたPCがあったと仮定する。この時、グラフィックボードの処理能力としてはもちろんRADEONであっても問題はないはずなのであるが、利用するビューワーのアプリケーションとRADEONのドライバーの相性が悪い場合、カメラの閲覧画面がハングアップしてしまうなどのトラブルが発生する。NVIDIAQuadroであってもこの問題は同様である。Quadroの方がパフォーマンスが高いからと言って必ずしも、ビューワーPCにとって最適であるとは限らないのだ。

 

 なかなか困った問題ではあるが、これはどのアプリケーションにとっても同じような課題があるため、100%の完全に動作保証を行うシステム設計を行うことは困難だ。

 ネットワークカメラシステムの設計を行う担当者は過去に納品したユーザーの履歴や経験などを頼りにできるだけ動作不良が起きなかった製品の組み合わせを探していくしか方法がない。

 実際に筆者も、システムを構成する場合は、「比較的、古い製品の組み合わせ」になることが多い。Windows10がリリースされた後も、長い間、Windows7を選定し続けたのもこの理由で、新しいものよりも実績のある製品の方が信頼性が高いのだ。

 特に新しい製品やOSを選定する場合は、いったん見送るケースが多い。なぜならば、新製品というものは、ほとんどの場合、発売された直後はバグが多いからだ。発売からしばらく経過し、市場に浸透してくるころにはバグも改修されてくるので選定しやすくなる。システム選定者は、アーリーアダプターにはなれない。

 

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ユーザーに理解して欲しいこと

 おそらく、上記のようなハードウェアとアプリケーションの相性の問題については、一般のユーザーにはなかなか理解しにくいことであろう。「高いPCを購入したのに、なぜきちんと動作しないんだ!」と激怒したくなる気持ちも充分に分かる。

  しかし、システム選定者は様々なリスクが起きることを覚悟したうえで、できるだけ障害が起きないように注意しながら構成を組んでいることをどうか少しでも理解して欲しい。

 ネットワークカメラシステムは、カメラ本体だけではなく、PoEスイッチなどのネットワーク機器やレコーダー、ビューワーPC、モニタなど様々な機器の組み合わせによって構成される。そのため、機器同士の予期しない相性の問題に直面するケースもしばしば発生しているのだ。システムが設計どおりに稼働しない時はほんとうに辛い。

 しかし、それでもなんとか安定的に稼働するように、ファームウェアの更新やバグの修正、機器の交換など様々な手を使って設計通りの挙動に近づけていく。これがネットワークカメラシステムの<光>と<影>の部分である。

 ネットワークカメラシステムでは、システムに柔軟性や拡張性を持たせることも可能ではあるが、その分、リスクとして機器同士の相性という<影>も付きまとうということを覚えていて欲しい。完璧に安全なシステムなど存在しないのだ。

 とはいえ、筆者はネットワークカメラシステムを否定するわけではない。大規模なシステムになればなるほど、アナログカメラシステムで構築することは現実的に困難であり、また高コストとなる。

 

 システムを設計するベンダーおよびそのシステムを活用するユーザーが、システムのメリットとデメリットの両方があることを少しでも理解いただけることを願っている。