クラウド型の録画サービスとは?
ネットワークカメラの録画をする方法として、現在、最も一般的な方法は事務所内にサーバーやレコーダーなどの録画媒体を設置する方法である。
しかし、徐々に導入が広がっているのがクラウドサービスを利用した録画である。これは、ローカル環境に録画媒体を設置するのではなく、クラウド上のサーバーに録画データを貯めておき、必要に応じて映像を参照するサービスである。
日本国内においては、少しずつクラウドサービスを選択するユーザーが増えているものの、まだまだレコーダーを事務所に設置する環境が圧倒的に多い。それはなぜだろうか?
いくつかの理由を考えてみる。
クラウドサービスの課題
クラウドが普及しない理由①:ネットワーク帯域を消費するため
現在のネットワークカメラシステムでは、高画質化が進んでいる。そのためカメラ1台あたりのデータ通信量は、一般的に、2Mbps程度は必要となる。カメラ1台程度でれば問題がないが、仮に10台のカメラを録画する場合、上りのネットワーク帯域で最低でも20Mbpsを消費することとなる。光回線とはいえ、安定的に約20Mbpsを利用することは困難な可能性がある。また、業務用のネットワークとは別回線として構築していれば問題ないが、仮に業務用のネットワークと同じ回線を利用する場合、業務用ネットワークに何らかの影響が発生する可能性がある。
クラウドが普及しない理由②:動画データは多くのHDD容量が必要となるため
ネットワークカメラでは、通常のファイル共有等とは異なり、基本的には24時間録画データを貯め続けることとなる。それ故に、多くのHDDの容量が必要となる。
仮に、カメラ10台を20Mbpsで録画し続けた場合、1週間で最低でも2TBのHDDが必要となる。クラウドサービスで高画質でかつ長期間録画しようとすると、コストがより膨らんでしまうのだ。
クラウドが普及しない理由③:固定IPの契約(またはダイナミックDNS)が必要となるため。
これはクラウドサービスの種類にもよるが、カメラ設置拠点に固定IPの契約(またはダイナミックDNS)を必要とするものもある。そのため、インターネット回線費用だけでなく、固定IPの契約費用もコストとして増してしまう。
クラウドではなく、オンプレミス型(レコーダーを事務所に設置した場合)でも固定IPやダイナミックDNSを利用すれば外出先から録画映像を閲覧できるモデルもあるため、クラウドサービス導入のメリットが弱まってしまうのだ。
以上のような理由から、ネットワークカメラにおいてはクラウドサービスの普及が十分には進んでいない状況といえる。
しかし、やはりクラウドサービスは、IT投資のリスク軽減や管理者の負担を少なくするなどのメリットがあり、今後、普及していくことが想定される。
一例として、そのサービスを紹介しておく。
Safie(セーフィー)
もともとは、ソニー系の会社でありながら、オリックスや 関西電力、キヤノンマーケティングジャパン、ティーガイア 価値共創ベンチャー有限責任事業組合 (NECキャピタルソリューションと ベンチャーラボインベストメントが共同運営)が資本業務提携を実施している。 2014年創業でありながら、業界内では注目されるサービスである。
主な特徴は圧倒的なコストパフォーマンスである。クラウドサービスが普及しない原因として<①帯域の問題 ②HDD容量の問題 ③固定IPの問題>があることを説明したが、本サービスはそのデメリットをいずれも打ち破っている。
①の帯域については、1台あた上り回線(500kbps〜1Mbps)しか利用しない。そうであるにもかかわらず、ハイビジョンで高フレーム(最大30fps)での録画が可能だ。②のHDDのコストについても、非常に安い。カメラ1台で1週間の録画期間の場合、月額料金はわずか1,200円だ。また、30日のプランでも2,000円となっている。また、別途、固定IPやダイナミックDNSサービスの契約がなくても導入することが可能だ。
コスト的にも最も気軽に導入ができるサービスの1つであると言える。
アロバビューコーロ
続いて紹介したいのが、アロバビューコーロだ。これは、カメラの映像から、来店客数・客層(性別や年齢)の把握・滞在時間などを分析する店舗向けのマーケティングツールだ。 通常、このような映像解析用のサーバーを導入する場合、店舗内に録画と解析用のサーバーを導入する必要があり、初期コストや保守コストが大きくなってしまうことがある。アロバビューコーロであれば、このような大きな初期投資をすることなく導入することが可能だ。
最後に
現状では、まだオンプレミス型の録画装置が多いものの、今後、モバイルなどのネットワーク技術がさらに発達することでクラウドサービスがより普及していくことが想定される。
初期投資やハードウェア管理の負荷を軽減したいユーザーはクラウドサービスの導入を検討いただきたい。