LANケーブルの配線距離の制限
ネットワークカメラとアナログカメラを比較した場合、ネットワークカメラには弱点が存在する。それは、LANケーブルの配線距離の問題である。アナログカメラの場合、同軸ケーブルを利用して配線を行うが、規格によっては300m~500mの配線が可能である。
一方で、ネットワークカメラの場合、LANケーブルの配線距離の制限として100m以内という制限がある。100m毎にHUBを設置しなければ、適切に通信ができない可能性があるのだ。
各地に電源がある場所であればそれほど問題にはならないかもしれないが、屋外で長距離の配線を行いたい場合、しばしばLANケーブルの配線距離の問題にぶつかってしまう。
LANケーブルの配線が100mを超える場合、メディアコンバーターやSFPモジュールを利用して光ケーブルに変換したり、コンバーターを利用して同軸ケーブルに変換しなければならない。
筆者も以前の記事では、TLCという装置を紹介した。
https://sun-ele.co.jp/products/detail?p=TLC-10PC2A-B
PoEエクステンダーについて
今回の記事では、「より簡易的に100m以上の配線ができる」装置を参考までに紹介する。例えば、以下のようなPoEエクステンダーである。この機器をLANケーブルとLANケーブルの間に挟むことで100m以上の配線が可能となる。
この機器は、光ケーブルのように数百メートルまたは数キロメートルを配線するようなケースは想定していない。どちらかというと「100mを少し超えそうだな・・・。」という、中距離の配線の場合に推奨したい製品である。
この装置の設置方法は極めて簡単だ。LANケーブルとLANケーブルの間にこの装置を挟み込むだけである。俗にいう「LANケーブルJJコネクター」のような使い方が可能だ。もちろん、この装置の電源は不要である。
配線系統のイメージとしては以下のような構成となる。
これまでは、100m毎にHUBを設置しようとすると、HUB用の電源が必要となったが、PoEエクステンダーは電源がなくても100m以上の配線ができるのだ。光ケーブルや同軸ケーブルに変換する必要もないため、非常に簡単に施工ができる。
重要な注意点として
ただし、このPoEエクステンダーも必ずしも完璧な製品ではない。配線距離およびエクステンダーの数が増えれば増えるほど、PoEの電源供給能力が低下するのだ。
※詳細は以下のURLを参照して欲しい。
例えば、もともとのコアスイッチ(PC側のスイッチ)が【PoE+】に対応したHUBであったとする。この場合、PoEエクステンダーを間に挟むと、カメラ本体の消費電力が12W未満の場合は問題なく利用できる。しかし、カメラ本体の消費電力が12Wを超える場合、適切に電源供給ができない可能性がある。
PoEエクステンダーはアクシスコミュニケーションズだけでなく、様々なベンダーからも販売されているが、この装置を設置した場合、どの程度、電源供給能力が低下してしまうのかは、きちんと確認したうえで、システム設計を行う必要がある。
PoEパススルーについて
PoEエクステンダーと類似する製品としてPoEパススルーという機能を保有する製品も存在する。例えば、ネットギアのGS105PEである。
このGS105PEという製品は、もともと電源ケーブルが同梱されていない。上位のPoE+ HUBから電源供給を受けて、さらに配下のネットワークカメラに電源供給ができるモデルである。
PoEエクステンダーとの違いは、電源供給ができるポートを2つ保有している点である。PoEエクステンダーと同様にこの装置を経由すると、カメラへの電源供給能力が低下するので、システム設計時は注意が必要である。
(※なお、GS105PEには電源ケーブルが同梱されておらず、通常のPoE HUBのように利用することができない。通常のPoE HUBの購入を希望する場合は、GS108PEなどのモデルの購入が必要となる。)
まとめ
アナログカメラと比較した場合のデメリットとして、ネットワークカメラはLANケーブルの配線距離が100mという制限が存在するが、今回、紹介したようなPoEエクステンダーを利用すれば、100m以上の配線が可能である。
また、いわゆるJJコネクターのように施工ができるので、施工も比較的簡単に実施することができる。高度な電源工事が不要となるのだ。
一方で、配線距離が長くなればなるほど、(100m単位でPoEエクステンダーを設置すると)、配線距離に応じて電源供給能力は低下するため、システム設計時は注意が必要だ。
また、筆者も本機器は、あくまでも「100mを少し超えそうな場合」の利用を想定しており、配線距離が長い場合やクリティカルな環境下では積極的な推奨はしていない。やはり配線が数百メートルを超えるような長い距離を配線する場合は、光ケーブルの利用を推奨する。
(※誤字・脱字は随時修正いたします。)