ネットワークカメラにおける需要予測
ネットワークカメラシステムを販売(在庫を行う)ベンダーにとって、需要予測は非常に重要な課題である。近年、ネットワークカメラは顧客ニーズの多様化の影響を受けて、多くの機種がリリースされている。例えば、アクシスコミュニケーションズだけでも約200機種のモデルがある。
これらの機器をすべて大量に在庫することは現実的に不可能だ。大量製造・大量消費の時代が終わった今日の市場において、必要なモノだけを欠品することなく、タイムリーに供給することが極めて重要な課題となっている。
小ロット・多品種の在庫をどのようにコントロールすればよいのだろうか?
月販10本!? それ、本当に正しいですか?
例えば、以下のような販売台数実績があったと仮定しよう。さて、2020年1月の売上予測は何本だと想定すればよいのだろうか?
平均値は万能ではない
まず、最も分かりやすい方法が【平均値】から想定する方法である。2017年~2019年までの実績を合算し、36カ月で割ればよい。
(0+2+0…15+12+20)/36 = 10.2本である。
では、この月販10本という数字が正しいかというと筆者は全く合っていないと想定している。次に以下のグラフを見て欲しい。
上記のグラフは2017年~2019年までの経過月を横軸に、販売台数を縦軸にとったものである。上記を見ると明らかに、2017年よりも2019年の方が売れていることが想定される。
ざっくりと見ると、『なんとなく20本くらいは売れそうだ』という予測がつく。少なくとも【10本】の在庫をしただけでは欠品を発生してしまうことは明らかだろう。
近似曲線(線形近似)を描いてみる
さて、ここでグラフに近似曲線を加えてみよう。
f(x)=0.06199485199x - 1.4412698413 という数式が得られた。
※なお、ここは、統計学を学ぶためのサイトではないので、近似曲線に関する詳しい説明は割愛する。
ここで2021年1月(37か月目)の37をXに挿入する。すると、以下の通りの結果となる。
f(37) = 0.6199485199(37) - 1.4412698413
f(37) = 約21.4本
つまり、ざっくりと説明すると、この売れ行きが維持できた場合、目安としては37か月目には、約22本売れると想定できるのである。
今回は、Rの2乗(相関係数)が『1』に近いとは言えないため(各点が直線に近いとは言えないため)それほど、信頼のおける近似曲線とはいえないが、先ほどよりも、より精度の高い需要予測をすることができた。
おススメの本
なお、この考え方(計算方法)は以下の書籍を参考としたものである。『微分・積分を知らずに経営を語るな』という新書であるが、統計学の入門書として筆者は優れていると感じている。
※上記のリンクはAmazonアソシエイトを利用しています。
まとめ
このような過去の売れ行きだけでなく、新製品のリリース時期や競合の動き、大型案件の受注などで、ネットワークカメラの需給バランスは大きく変動する。
例えば、通常月は10本くらいしか売れていない製品が急に100台の大型案件の受注があった場合、在庫不足が発生してしまう。
代替品があるような製品や個人向けの製品であれば多少の在庫不足が発生していても問題はないが、法人向けの製品の場合、納品の遅れにより契約違反となってしまったり、顧客の信頼を失ってしまうこととなる。
ネットワークカメラのメーカーやベンダーは大型案件の受注精度を正確に把握するとともに、需給バランスを予想する力が重要となる。