商品知識は必要がないという風潮
近年では、セールスマンには「詳しい商品知識は必要なく、むしろヒアリングスキルやマネジメントスキルが重要視される傾向がある。」例えば、顧客先でいきなり製品をPRするのではなく、まずは顧客の課題をしっかりと引き出したうえで、最適なソリューションを紹介する方が望ましいとされている。
商品知識よりもむしろ、顧客の『困っていること』を聞き出すことができる能力が必要とされるのである。確かに、顧客ニーズや価値観が多様化する現在において、このヒアリング能力は非常に重要なスキルである。
しかし、筆者は一方で商品知識を軽視される傾向はあまり望ましくないと考えている。特にネットワークカメラシステムにおいては、光学技術(カメラ)の知識だけではなく、サーバーやPC、ネットワーク、周辺機器、OSなど、非常に幅広い知識が必要となる。
さらに、近年では、様々なソリューションが次々とリリースされているため、新しい商材を素早く理解し、覚える能力も必要とされる。
商品知識がないと、誤ったシステム構成を組んでしまい、障害やトラブルの原因となってしまうリスクも高くなる。
筆者は、顧客ニーズが多様化し、取り扱う商材が増えた昨今の市場であるからこそ、商品知識は非常に重要であると考えている。今回は、どのようにしてネットワークカメラシステムにおける商品知識を高めることができるのかを説明したい。
実機に触れる
筆者が考える『商品知識を最も高める方法の1つ目』は実機に”触れる”ことである。ネットワークカメラシステムの場合、単にカタログを眺めてスペックを覚えるだけでは、あまり役に立たない。
実機に触れて『実際にどのような動画を撮影することができるのか?どのような使い勝手なのか?』を理解することが重要であると考えている。
残念なことに、ネットワークカメラシステム場合、カタログスペックの記載に関する基準が比較的、曖昧な状況である。最も分かりやすい例が『暗い場所でどの程度撮影ができるかという最低照度性能』である。
各社とも『XXXルクス』という記載をしているが、同じスペックであっても実機を並べて撮影テストをしてみると、その能力に大きな差があることも少なくない。
百聞は一見に如かずなのである。
なお、ここで『実機に触れる』という表現をしているが、これは単に展示会やイベントなどで出展されている機器を見ることではない。デモ機やサンプル品をメーカーから借りて、実際に自分自身で製品を設定し、評価することである。
各メーカーが展示会やイベントで見せている製品は、ある面で「製品の良いところ」しかPRしていない。製品の本当の意味でのメリット・デメリットを理解するためには、実機に触れて、自分自身で設定してみるしかないのだ。
講習会やセミナーに頼らない
筆者が考える『商品知識を最も高める方法の2つ目』は、講習会やセミナー、学習会に頼りすぎないということである。
何か新しい商材を覚えようとする場合に、最初から講習会やセミナーに出席しようとする方がいる。もちろん、製品の概要を短時間で理解するという点において、講習会やセミナーは有効な手段の1つではある。
しかしながら、それだけでは費用対効果が不十分だ。勉強で予習・復習が必要なように、ネットワークカメラシステムの商品を覚えることについても、事前学習は極めて重要である。まずは、70%程度は製品を理解したうえで、講習会やセミナーを受講すると、費用対効果を最大限にすることができるだろう。
むしろ、何も事前準備をしない状態で受講してしまうと、翌日にはその内容を忘れてしまうのではないだろうか。
1つの製品の応用でしかない
筆者が考える『商品知識を最も高める方法の3つ目』は、まずは、何らかの1つの商材を詳しく覚えることである。例えば、ネットワークカメラシステムには様々なメーカーからレコーダーがリリースされているが、その設定手順は、ほぼ共通である。
最初にカメラにIPアドレスやパスワードを設定し、その次に、レコーダー側でカメラの登録作業を行い、解像度や期間の設定を行うのである。何か1つのメーカーの製品の設定方法を習得してしまえば、『基本的には他の製品も、その応用で覚えることができる』のである。
もし、何か他のレコーダーではなかったような独特な設定項目があったとしたら、その機能が製品の特徴や強みであるかもしれない。
何か1つのベースとなる製品を覚えて、そこから他の製品を覚えていくと効果的に理解力を高めることができるだろう。
最後に
近年では、顧客ニーズの複雑化に伴い、セールスマンも非常に多くの商材を学ばなければならない。また、働き方改革の推進により、なかなかか落ち着いて商品を覚える時間を確保できないことも現実的にあるだろう。
顧客の幅広いニーズに対応しようとすると、必然的にいろいな商材を扱わなければならず、結果として無数の商品を覚えなくてはならない。
そのような市場環境であるからこそ、筆者は『商品を覚えて深く理解し、時には取捨選択することが非常に重要』であると考えている。
ありとあらゆる製品を売ろうとするのではなく、『会社または自分にとって何を取り扱う商材として規定し、何を取り扱わない商材として規定するのか』を自分自身で決めるのだ。そうすれば、短い時間であっても、必要な製品知識を得られるのではないだろうか。