保守の重要性
ネットワークカメラシステムを導入するユーザーは『保守契約』に加入すべきかどうか迷うケースも多いだろう。ネットワークカメラシステムでは、カメラだけではなく、PoEスイッチやレコーダー、PCなど様々な機器の組み合わせで構成される。そのため、障害発生時は<障害切り分け>を行い、どの部分で障害が発生しているのか分析し、対応することが非常に重要である。
保守契約に加入していれば、障害発生時にベンダーの訪問修理対応を受けられるが、加入していない場合は、都度、修理費用や作業料金を請求されるケースもある。本記事では、ネットワークカメラシステムにおける保証や保守について考える。
保証・保守の違いについて
まず、<保証>と<保守>の違いについて理解しておく必要がある。一般的に、<保証>とは『物品の修理を受けられる権利』である。例えば、アクシスコミュニケーションズのネットワークカメラの場合、多くの製品で『3年保証』が付属している。さらに延長保証に加入すると『5年保証』に伸ばすことも可能である。
ここで注意が必要なのは、この『保証』という概念には、『現地での作業』は含まれないという点である。例えば、カメラに故障が発生した場合、カメラを取り外してメーカーや修理センターへ送る必要があるが、このようなカメラの取り外しや取り付け作業はこの保証には含まれない。
そのため、故障発生時は、別途、導入ベンダーに相談をしてカメラを取り外してもらうか、自社でカメラを取り外す必要がある。修理費は無償であっても、作業費が別途必要となるのだ。
これはカメラだけではなく、あらゆる製品で注意が必要な点である。例えば、PoEスイッチにも『5年保証』が付属してあったとする。この場合、一般的には機器の取り外しや再設置は含まれていない。ユーザー自身で機器を取り外して、メーカーや修理センターに送付する必要がある。
もし、カメラやPoEスイッチなどの取り外しや取り付けも含めた『現地作業』も、ベンダーに委託する場合は、『保証だけでなく、保守契約』が別途、必要となることもあるので注意して欲しい。
なお、この『保証』や『保守』の考え方は、メーカーやベンダーによって、バラバラである。保証の範囲の中で訪問対応するベンダーも存在する一方で、別途、有償の保守メニューを設定しているケースもある。
導入前には、ベンダーに故障時の対応について確認しておくことが望ましい。
送付修理か?先出しセンドバックか?
保証においても、『単純な送付修理なのか?それとも、先出しセンドバックなのか?』は非常に重要である。特に、PoEスイッチの保証形態を確認する際は注意したい。
一般的な『保証』の場合、送付修理のケースが多いだろう。この場合、機器の故障時は故障品をいったんメーカーや修理センタ―に送付し、修理後に再度、機器を設置する必要がある。よって、<配送期間>や<修理期間>はシステムがダウンした状態となるということである。
一方で、先出しセンドバックの場合、メーカーに連絡すると『先に交換用の機器が届く』仕組みである。ユーザーは、交換用の機器を設置後に、故障品をメーカーへ返送すればよい。ダウンダイムを最小限にしたい場合は、この『先出しセンドバック保証』を選択し、購入しておく必要がある。
さらに、ダイムタイムを最小にしたいユーザーは『コールドスタンバイ機』という予備機を保管しておき、障害発生時は、まずは予備品を借設置してから、故障品を修理するなどの対応が必要である。
ユーザー自身で考える必要性
これまでの記事の内容を読むと、『訪問作業を含む保守契約』に加入しておき、さらに『先出しセンドバックやコールドスタンバイ機(予備機)』を準備しておくことが必須と思われるかもしれないが、実際には保守や有償の保証に加入していないユーザーも多い。
なぜならば、保守や有償の保証に加入すると、当然ながらコストが非常に大きくなるためである。例えば、防犯上の抑止的な効果を目的として導入しているユーザーは、最悪の場合、カメラの故障期間が長くなってもそれほど業務に対して直接的な影響は少ないだろう。最悪の場合、部分的に機器を買い替えればよい。
一方で、ネットワークカメラシステムが業務において非常に重要な意味合いや役割を担うユーザーにとっては、保守や有償の保証は必須となる。例えば、金融機関や工場の生産ラインのモニタリング用としてカメラを導入している場合などである。
カメラが停止してしまうと業務上に大きな影響が発生することが懸念される場合は、有償の保守や保証に加入しておくことが望ましいだろう。
ユーザーがネットワークカメラシステムをどこまで、どのように活用しているかによって、保守や保証の加入の重要度は変化するのである。
まとめ
*機器の『保証』だけでは、現地の作業料金が別途、必要となる場合がある。
*ダウンタイムを最小にしたい場合、『先出しセンドバック保証』や『予備機』が必要である。
*業務への影響度に応じて、有償の保守や保証に加入すべきかどうか判断しなければならない。