Y=aX+bのチャネル分析
前回の記事で、チャネルのポテンシャル分析の手法について説明をした。
今回は、中学生の時に勉強した【Y=aX+b】を利用したポテンシャル分析について説明したい。
繰り返しとなるが、経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)は限られている。このリソースをどのように割り当てするのか、チャネルを分析する必要がある。
※なお、本記事は、特定の企業や団体に対して向けられたものではない。筆者は、社会人経験のほとんどを”パートナー営業(チャネル政策)”を担当していたため、そのノウハウを記録しておくことを目的としている。
Y(売上)= a(ポテンシャル)× X(経営資源)
まず、それぞれのアルファベットの意味を定義しておきたい。
Y = 売上
a = ポテンシャル
X = 時間(または経営資源)
b = 現時点での売上
Y(売上)を伸ばすためには、a(ポテンシャル)のあるチャネルに対して、X(経営資源)を投入することが望ましいということだ。
チャネル(取引先)をそれぞれ【オレンジ】【グリーン】【イエロー】で表現した。
オレンジ色のチャネル(取引先)について
オレンジ色のチャネル(取引先)は、すでに一定の大きな取引量がある顧客である。取引関係において”成熟した状態”にあり、たくさんの経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を投下したとしても、大きな実績拡大は期待できない状況である。
一方で、長期的な取引関係にある場合、多少、経営資源を減らしたとしても、取引量への影響が少ない顧客である。
このような顧客に対しては、”仕組み”で実績を維持する方法がある。例えば、達成報奨金の制度である。『XXX円以上の取引があった場合、大きな特典がある。』という仕組みを構築するのである。
このような仕組みがうまく構築された場合、大きく実績が低下するリスクを少なくすることができる。
イエローのチャネル(取引先)について
イエローの取引先は、大規模なリソースを投下しても、大きな実績の拡大が見込めない顧客である。例えば、従業員数が少なかったり、そもそもの企業規模が小さい会社である。
イエローのチャネル(取引先)に対して人や時間を使いすぎると、”本来やるべき仕事”ができなくなってしまうため、十分に注意が必要だ。このようなチャネル(取引先)に対しては、効率化する必要がある。
例えば、『問い合わせはすべてチャットを通じて行ったり、非対面営業(いわゆるインサイドセールス)だけに限定する』などの施策を行う方法である。
グリーンのチャネル(取引先)について
結論から言うと、グリーンのチャネルに対して、経営資源は積極的に投下することが望ましい。つまり、実績が伸びるチャネルに対して、より多くのリソースを投下するべきなのである。
現時点では、まったく取引がない状況であったとしても、多くの経営資源を投下することで実績の拡大が見込める顧客に対してサポートを充実させるのである。
これにより、オレンジ色のチャネルで売上を維持しながら、グリーンのチャネルで売上を伸ばすことができるのだ。イエローのチャネルについては、とにかく効率化を行い、グリーンのチャネルに費やす時間や労力を増やす必要がある。
なお、グリーンのチャネルに対しては、中途半端なリソース投下は許されない。徹底的にリソースを投下することで、ようやく開花することもある。
グリーンのチャネルを見つけることは極めて困難
これまで筆者は偉そうに解説していたが、はっきり言って、こんな考え方は”当たり前のこと”である。誰しもが、『もっと買ってくれる顧客に売りたい』と考えるのは当たり前だ。
問題は、『グリーンの顧客を見つけるのは極めて困難である。』ということだ。多くのリソースを投下したことで実績が拡大したというのは、あくまでも”結果論”である。
実際にどの顧客の取引量が伸びるのかどうか事前に予測することは極めて困難だ。せっかく多くの経営資源を投下してもなかなか実績が出なかったり、ポテンシャルが小さいと思っていた顧客との取引が意外にも大きくなるケースも少なくない。
重要なことは色分けすること
筆者がこの記事を通じて伝えたかったことは、”オレンジ” ”イエロー” ”グリーン”は明確に分ける必要があるということだ。筆者が以前、勤めていた会社では、各セールスに対して自社の顧客を分析させたところ、『ほとんどをグリーンにしていた』ことがあった。これでは、分析を行う意味がない。
グリーンのチャネルにリソースを投下するためには、ある面で、イエローのチャネルの実績低下を覚悟する必要があるということだ。また、この判断を誤った場合、大きな経営的なリスクがあることも留意しなければならない。
そのため、どの顧客をグリーンとして設定するのかについては、明確化されたルールに基づいて行い、定期的に見直す必要がある。個人の判断に委ねるのではなく、明確化された一定の基準に基づいて決めるべきなのである。
分析方法の例については、前回の記事を参考にして欲しい。