B to B to B におけるポテンシャル分析の重要性
今回は、B to B to B(法人営業)におけるポテンシャル分析について説明したい。
私が説明するまでもないが、ヒト、モノ、カネ、情報などの経営リソースは限られている。この限られているリソースをどのように分配するのかという指標が必要である。
どうしても、法人営業におけるセールスは目の前の売上を優先するため、「行きやすい顧客」にリソースを費やしてしまう傾向がある。
もっと平たく説明すると、「緊急性と重要性」において緊急性の高い仕事を優先するあまり、重要性の高い仕事がおざなりになる傾向があるということだ。
これを修正するために、ポテンシャル分析が必要となる。ポテンシャルが高い顧客により多くのリソースを投下し、経営リソースの最適化を目指す。
※なお、本記事は、特定の企業や団体に対して向けられたものではない。筆者は、社会人経験のほとんどを”パートナー営業(チャネル政策)”を担当していたため、そのノウハウを記録しておくことを目的としている。
TEAMS分析
ポテンシャル分析については、さまざまな考え方があるが、今回はTEAMS分析について説明したい。TEAMSとは、以下の頭文字である。
T トップダウン&ボトムアップ
E 従業員(employee)
A 能力(ability)
M 相性(match)
S ステークホルダー(stakeholder)
それぞれ詳細を説明する。
T トップダウン&ボトムアップ
まず、最も重要な要素の一つが「トップダウンが効くかどうか?」である。例えば、従来、顧客が利用していたシステムを入れ替えし、新しいシステムを導入するケースを考えてみる。
トップダウンが有効な企業であれば、多少強引にでも新しいシステムを導入することができる。つまり、改革のスピードが早いのだ。
一方でトップダウンがあまり効かない企業の場合、従来の業務形態を保守する傾向が強く、改革がなかなか進まない。
スピーディーな取引拡大を目指す場合、トップダウンが効く企業風土かどうかは非常に重要だ。しかしながら、トップダウンだけでは誤った判断が先行してしまうリスクもある。
そこで重要なことが「ボトムアップ」も効くかどうかという視点だ。現場の担当者の意見や課題がトップに集められていることで、最適な判断ができる。
E 従業員(employee)
続いて、従業員数だ。当然ながら、従業員が1名の企業と100名の企業では、100名の企業の方がポテンシャルは高い。
従業員1名の会社に注力するよりも、従業員100名の会社に注力する方が合理的だ。
ここで注意が必要なことは、従業員数が1000人を超える企業の場合、いろいろな部門に分かれているため、必ずしも「従業員数=ポテンシャル」にならない点だ。関係がない部署を除いた「有効従業員数」で考える必要がある。
A 能力(ability)
先ほどの、従業員数とは真逆のことになるが、今日のビジネスにおいて個々の能力は非常に重要だ。例えば、少人数のチームであったとしても、特別な能力を保有している場合、非常に大きな実績を生んでいる場合もある。
インターネットやAIを活用することで、たった一人で大きな売上を上げているケースもある。
特に、ネットワークカメラのように、販売およびアフターサービスにおいて専門知識を有するような商材については、従業員の数はもちろん、この”能力”は非常に重要である。
M 相性(match)
これは『自社の企業理念と取引先の方針が合致しているかどうか?』である。結局のところ、企業と言っても”ヒトとヒトのつながり”である。志は無視できない。
一例であるが、経営方針として、”CSRやコンプライアンス”を掲げていたとする。一方で、パートナーとなる取引先が、極端な”いわゆるブラック企業”であったり、”コンプライアンスを無視したような経営”を行っていたとする。
この場合、パートナーとしては相性が合わない可能性がある。
最終的な”ゴールや目標”を共有できる相手かどうかは非常に重要な要素である。
S ステークホルダー(stakeholder)
これは、自社および取引先に関係する会社とのバランスを考慮する必要があるということだ。
例えば、いまA社と大きな取引を行っていたとする。そして、A社のライバル会社であるB社とも取引を始めようとしたとする。
この場合、A社との信頼関係を失ってしまうリスクがるため注意が必要である。これは、B社と全く取引してはいけないと言っているわけではなく、どのような関係性を構築することが最善策であるのか、バランスを見ることが重要であるということである。
まとめとして
今回は、取引先のポテンシャル分析の手法の1つとして『TEAMS分析』を紹介した。なお、このTEAMS分析は、筆者が”てきとうに思いついた指標”であり、決して標準的な考え方ではない。
極端なことを言ってしまえば、ポテンシャル分析の指標は、会社の目指す方向性によって異なるべきである。
しかし、重要なことは、『会社として共通したポテンシャル分析』を行うことである。どうしても個人レベルにおいては、全体最適ではなく、個人の最適を優先する傾向にある。
そのため、会社全体として、リソースをどのように割り当てするのかという課題に対して、共通のルールを保有しておくことが重要であると考えられる。