ネットワークカメラ推進会

Network camera promotion and communication

導入ユーザーをどのように管理するのか?

導入ユーザーの履歴を管理する難しさ

 たとえば、あなた(ユーザー)がどこかのベンダーからネットワークカメラシステムを導入したとする。比較的、きちんとしたベンダーであれば、納品図書や完成図書などの報告書や説明書の納品物を受け取ることができるであろう。

 一方で、システムが比較的、小規模なものであったり、導入コストが低いベンダーの場合、上記のような納品物はない場合も存在する。

 

 実は、ベンダー側にとってもユーザーが導入したシステム環境を正確に把握し、履歴を残していくことは極めて難しい。例えば、導入後の保守契約などを締結している場合は除くが、単純な“買い切り”だった場合、なかなかユーザーの導入したシステムの詳細を何年間も継続して残しておき、社内で完全に共有することはなかなか難しいのである。ネットワークカメラシステムは、カメラ本体だけではなく、PoE HUBやレコーダー、モニタなど様々なシステムの組み合わせにより成立する。また、システムの設計値や設定値もユーザーによってバラバラである。

 そのため、納品時はこのようなシステム環境や設定情報をきちんとドキュメント化していても、その後、増設やシステムの一部のリプレイスおよび設定変更があった場合、ドキュメントが更新されなかったり、うまく引き継ぐことができなかったりするケースもあるのだ。ある程度、大規模な商談であれば残しているケースも多いかと思うが、比較的、小規模なシステムの場合、さすがにすべてのユーザーのデータを正確に残しておくことは難しい。

 これはなにもネットワークカメラシステムに限ったことではないと思われる。例えば、PCをユーザーに納品した場合も、ユーザーに納品したPCのスペックやアプリケーションを完全に把握し、履歴として残すことは難しいだろう。

 まして、ユーザーが他のベンダーからもシステムの一部を導入していた場合、なおユーザーの正確なシステム環境を管理することは難しくなるだろう。

 ユーザーにとっては「導入した業者であれば分かるはず!」と思われるかもしれないが、担当者の部署異動や退職などにより、意外と情報がうまく引き継がれなくなってしまうケースも多いのだ。難しいシステムになればなるほど、ユーザー管理が属人化してしまう傾向は否定できない。

 一方で、ユーザー自身も、ある程度、情報システムについてのスキルがある担当者が存在するケースではきちんとシステム情報を管理していると思うが、そのような担当者が不在の場合、ベンダーに任せっきりになってしまうことも多いかと思われる。

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CRMを活用する

 この問題を解決するシンプルな答えは、おそらくCRM(およびSFA)の活用であろう。CRM上に顧客情報を登録しておき、どのようなシステムが導入されているのか、またどのような活動をユーザーに対して行ったのかきちんと社内システムで共有されることが理想であろう。

 しかし、残念ながら、このCRMを利用した場合も、カメラシステムの導入状況をすべて正確に記録していくことは難しい。一般的なCRMの目的としては、営業活動を軸として作られているだめ、ユーザーに対してどのように営業活動やアフターフォローを行っているのかという行動管理として用いられる。

 複雑なネットワークカメラシステムの細かい情報を記録し、検索するのにはパッケージシステムの場合、適切にマッチしない可能性もある。また、CRMの入力自体が社員の負担になってしまい、なかなかシステムが定着しないケースも多いのではないかと考えられる。

 

解決策として:クラウドサービスの利用

 筆者が考える解決策の1つがクラウドサービスの有効活用(またはリモートによるメンテナス環境の構築)である。クラウドサービスによる録画の場合、ユーザーが利用しているカメラの情報は原則として、クラウド上のデータセンターに集約される。そのため、ユーザーが何の機種を何台利用しており、トラブルが起きていないのかなどの情報をある程度、データセンター側で管理することができるのだ。

 これまでは、クラウドサービスのコストが大きかったこともあり、なかなかクラウドサービスを活用した録画形態は普及せず、オンプレミスによる録画方法が主流となっていたが、今後、5Gなどが広がるようになると、クラウドサービスによる録画を選択するユーザーがさらに増えることが想定される。

 また、クラウドサービスによる録画を希望しない場合も、何らかのかたちでベンダーがユーザーのシステムに対してリモートでログインできる環境があれば、もし何かトラブルが発生した場合も、現地に出動しなくても、ある程度、その障害内容を切り分けができるメリットがあると考えられる。

 例えば、以前このブログでも紹介したヤマハ製のスイッチであれば、ネットワークマップを描くこともできるので「どのスイッチに結線されたカメラに障害がおきているのか」「ネットワーク上のトラブルが発生していないか?」など推測することができる。

 

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 解決策として:社内のルールを作成する

 解決策の2つ目が社内の運用ルールを明確化しておくことである。なにもCRMなどの高価なシステムを導入しなくでも、まずはファイルサーバーやクラウドサービスを利用してユーザーに提示した見積書や納品書、施工時の配線図や設定資料などを格納しておくだけでも、一定の効果はあるだろう。

 導入ユーザーから何らかの問い合わせを受けた際に、まずは社員が共有しているファイルサーバーなどにユーザーのシステム情報が格納されていれば、ある程度、ユーザーの状況を想定することができるであろう。

 逆に、このような運用ルールを全く決めずに個人の裁量に任せていた場合、どうしても担当者の異動などがあると過去の履歴がわからなくなり、どのユーザーにどのようなシステムが導入されているのか曖昧になってしまい、障害時の対応に時間がかかったり、次のリプレイスの時期がわからなくなってしまうリスクが発生してしまうのだ。

 なお、これはあくまでも筆者の個人的な考えであるが、なにか顧客の導入システムを記録していく場合は、あまりにも細かく記録させるようにしてしまうと、逆に入力の手間が大きくなってしまい、社内で定着することが難しくなってしまうだろう。

 データを共有する場合の最低限のルールとして「書類を作成した日付」や「格納すべき資料の種類」を明確化しておくと、比較的、現場の負荷も少なく、社内の情報共有が進み、結果として顧客満足度を高めることができると思われる。

 

 

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 ネットワークカメラシステムは、この数年で飛躍的に市場が広がり、様々な製品やソリューションがリリースされた一方で、まだまだシステムの稼働状況を管理する手法がベンダー側もユーザー側も確立できていない側面も否定できない。

 これからも様々なAIを活用したソリューションが市場に投下される可能性があり、システムを導入するベンダー側も、また活用するユーザー側も、導入したシステムを効率的に管理する手法を模索する必要がある。