ネットワークカメラ推進会

Network camera promotion and communication

ベンダーロックインを防ぐには?

ベンダーロックインとは?

 ベンダーロックインとは、何らかのシステムやサービスを導入した際に、その導入したベンダーの技術に依存してしまい、他ベンダーへのシステムの移行やリプレイスが困難になる現象である。

 

 残念ながら、ネットワークカメラシステムもベンダーロックインが発生しやすいシステムの1つであると筆者は認識をしている。小規模なシステムであればそれほど影響は少ないが、システムが拡大するほどベンダーロックインが発生しやすい。特に、日本国内においては、情報システム部門の管理者が存在していなかったり、監視カメラシステムは情報システム部門の管轄外として扱われるケースもあるため、必然的に導入したベンダーに導入後のフォローを丸投げしてしまうのである。

 

 また、導入したベンダーの内部でも「特定の担当者だけが顧客のことを把握しており、他の担当者は正確に顧客のシステム環境が分からない」という属人的な状況に陥ってしまいがちである。

 

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なぜベンダーロックインが発生するのか?

 ベンダーロックインが発生する原因として筆者は以下のように考えている。

 

①施工を伴うシステムであるため

 

 ネットワークカメラシステムでは、LANケーブルや光ケーブルを用いて配線を行うが、この配線経路や配線系統はやはり実際に施工を行ったベンダーでなければ、把握することはなかなか困難である。

 導入時にきちんと配線経路を図面などに残している場合は問題がないが、しっかりしたベンダーでなければ、このような書類を残すケースは少ないだろう。配線図やシステム系統図を作成する場合、有償対応となるケースも多い。

 また、一度設置したカメラを移設や増設をした場合に、一部の配線経路を変えるケースもあり、これを適切に記録していく必要があるが、書類のメンテナンスが漏れてしまうと正確な配線経路が分からなくなってしまう。

 さらに、どんなに図面上に経路を残していたとしても、実際に現場を見てみると想像以上に複雑な配線となっているケースもある。そのため、最初に配線を行ったベンダーに必然的に依存し、ベンダーロックインが発生するのである。1本1本のLAN配線の経路を探していくことは極めて困難だ(または時間がかかる)。

 

 

②システムが複雑であるため

 

 ベンダーロックインが発生する2つ目の理由としては、システムそのものが複雑化しているためである。ネットワークカメラシステムにおいては、カメラだけでなく、PoEスイッチやレコーダー、サーバー・PC、モニタなど様々な製品を組み合わせて1つのシステムを構築している。

 それらのすべての機器は、当初導入したベンダーがネットワークや全体の負荷を計算して設計したシステムである。そのため、他のベンダーがリプレイスをしようとした場合に、導入したベンダーに確認をしなければ詳細なシステム設計の理由がわからないケースもある。

 例えば、モニタでも、単純に卓上設置している場合もあれば、壁面や天吊状態で設置している場合もある。さらに分配や延長をして設置していることもある。これらの設置状況を導入したベンダーであれば把握できるかと思うが、他のベンダーは1つずつ現地調査を行い確認作業をする必要があるため、ベンダー移行のハードルは高くなるのである。

 

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ベンダーロックインを防ぐためには?

 では、特定のベンダーに依存しないようにするためには、どのような対策が必要だろうか?筆者が考える対策は以下の通りである。

 

①マルチベンダー対応のVMSやレコーダーを導入する

 

 第一に、録画をするソフトウェアやレコーダーの機種選定を慎重に行うということである。録画を行う機器には「特定のメーカーのカメラだけ録画できるもの」と「様々なメーカーのカメラも録画ができるもの」の2種類が存在している。

 カメラメーカーがリリースをしている純正のソフトウェア(またはレコーダー)の場合、原則としては、特定のメーカーのカメラしか登録・録画することができない。一方、サードパーティー製のソフトウェア(またはレコーダー)の場合、特定のメーカーだけでなく、様々なメーカーのカメラを登録・録画できる。

 カメラメーカー純正の録画媒体にもメリットはあるのであるが、ベンダーロックインを防ぐという観点からは、サードパーティー製の録画媒体を選択した方が望ましいだろう。

 

②設定情報やパスワードを正確に把握する

 

 実は、結構多いのが「システムを利用しているユーザー自身も、システムのパスワードがわからない」というケースである。システムには通常、設定を変更できる「管理者アカウント」と映像の閲覧や再生のみができる「ユーザーアカウント」の2種類が存在しているが、利用しているユーザーでさえ「ユーザーアカウントは覚えていても、管理者アカウントは忘れている」という事態が少なくないのである。

 導入したベンダーの担当者だけが管理者アカウントを把握しており、ユーザー自身は管理ができていないのだ。これでは、ベンダーロックインが発生するのは当然である。

 導入したユーザーは管理をベンダーに丸投げするのではなく、最低でも「カメラとレコーダーのユーザー名やパスワード」は把握し、履歴を残しておくことが望ましい。

 

 

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まとめとして

 ネットワークカメラシステムだけにとどまらず、どうしても「システム」と呼ばれるソリューションについては、ベンダーロックインが発生しやすい。社内では、様々なシステムを利用するため、いちいち1つ1つのシステムを管理することは厄介で、なかなかベンダーロックインを完全に防ぐことは難しいと思われる。

 しかし、システムを導入するユーザーは初期コストだけではなく、ベンダーロックインのリスクも検討したうえで、システム選定を行って欲しい。そうしなければ、将来的なコストはより大きいものとなってしまうだろう。