自動追尾機能とは?
ネットワークカメラの首振りやズームができるモデルの一部には、自動追尾と呼ばれる機能が搭載されている。
これは、撮影している映像の中に何らかの被写体が入ってきた場合に、その被写体に合わせで首振りしたり、ズームしたりすることができる機能である。
ヒトの手によって首振り操作をしなくてもよいので画期的な機能である。
しかしながら、自動追尾には運用上の課題も多いので実用性はそれほど高くない。具体的な例で説明しよう。
ネットワークカメラ“VB-R13VE”の自動追尾機能【キヤノン公式】
誤検知や未検知のリスクがある
まず、そもそもネットワークカメラはどのようにモーション検知や自動追尾を行っているかご存知だろうか。
メーカーによってもアルゴリズムは異なるが、基本的には映像の差分で物体を判断している。
つまり、イメージとしては、一枚目にベースとなる背景があり、二枚目に何らかの物体が入ると、映像の変化が生まれるため、変化した部分を物体として認識する。
よって、車両のヘッドライトや照明および日光の入り方によっても、影響を受けてしまうリスクがある。
完璧な物体の検知を実現できるものではない。
明るく照明が安定的な室内であれば、モーション検知および自動追尾についても、比較的高い精度で機能することができる。
しかしながら、屋外など自然光の変化を受けやすい環境においては、未検知や誤検知のリスクが高くなる。
被写体が小さい場合
ネットワークカメラの映像に対して、被写体が小さすぎる場合もうまく検知ができない原因となる。
上述したように、ネットワークカメラは映像の変化量(差分)で物体を検知している。つまり、映像に高いて被写体が相対的に小さい場合、うまく検知できないのだ。
一般的なネットワークカメラでは、モーション検知時に『検知を行う最低のサイズ』を設定する。
例えば、最低のサイズを5パーセントと設定した場合、映像全体で4パーセント以下の被写体が入っても検知しないのだ。
これは、トレードオフの関係といってもよい。最低の検知サイズを大きく設定すれば誤検知は多くなるが、未検知のリスクが高くなる。
一方で、最低の検知サイズを小さく設定すれば未検知は防ぐことができるが、誤検知は多くなる。
一度に被写体が2名以上入った場合
自動追尾の設定を行っていた場合、映像上に2人以上の人物が入った場合も、自動追尾が破綻する原因となる。
つまり、最初にAさんが映像に入ったため、Aさんを追いかけている途中で、Bさんも映像内に入り込んだ場合、カメラはAさんとBさんの両方を追いかけることはできず、どちらかを優先することとなる。
つまり、映像に複数人のヒトが入った時点で自動追尾はうまく機能しないのである。
これまで説明したように自動追尾機能は、設置環境や被写体により、適切な映像を取得できないリスクがある。ネットワークカメラシステムは近年、急速に機能が向上しているものの、画像の差分を解析して動作している以上、限界があるのも事実だ。
映画のようにカメラが被写体を追いかけるようなシステムをイメージされてしまうと、期待はずれだと思われてしまうかもしれない。
自動追尾機能はどのように活用すべきか?
これまで自動追尾機能を批判するような内容を記載してしまったが、自動追尾機能を否定するわけではない。あくまでも筆者個人の推奨であるが、固定カメラと自動追尾機能を併用することを推奨したい。
2台カメラを設置し、基本的には固定カメラで撮影を行い、それを保管するために自動追尾機能保有したPTZカメラを設置するのである。この方法であれば、仮に自動追尾機能がうまく機能しない場合も、固定カメラである程度は映像の取りこぼしを防ぐことができる。
固定カメラで撮影できない部分を、PTZカメラの自動追尾機能で補うのだ。
さらに、日本ではまだリリースされていないが、固定カメラを利用した侵入検知システムとPTZカメラを連携させて、被写体を追いかけるソリューションも存在している。
AXIS Perimeter Defender PTZ Autotracking
または、以下のような検知器をPTZカメラを組み合わせて、検知器側で被写体の位置を把握しつつ、その情報をPTZカメラに伝えて、連携させるような仕組みを構築すると、自動追尾の精度も高くなるかもしれない。
まとめ
*自動追尾機能は、手動で首振り操作をしなくても自動的に被写体を追いかけるため、非常に画期的である。
*しかしながら、設置環境など実運用では難しい課題も多い。特に、映像上に2名以上入った場合は、適切に被写体を追いかけることができない。
*国内では販売されていないケースもあるが、別途、固定カメラや物理的な検知器などと連動させて追尾させる方法も存在している。