録画の方法は大きく3種類
飲食店や小売店など、各地に多店舗展開をしているユーザーにとって、どのような方法で映像を取得し、録画するのか考えることは非常に重要である。
ネットワークカメラの映像を録画する方法は大きく3種類ある。今回は、それぞれの方法のメリットとデメリットについて説明しよう。
①本部に録画装置を設置するパターン
第一に、本部に大型の録画装置を設置するパターンである。各店舗には、カメラが数台設置され、その映像をすべて本部で録画する。録画を行うためには、各店舗と本部でVPN(拠点間通信)などを構築する必要がある。
この構成のメリットは、録画装置の管理負荷を本部に集中できる点である。本部にIT技術者がいれば、詳しい担当者が録画装置を管理すればよい。録画装置の修理やメンテナンスについても、各地を回る必要がなく、原則としては本部で集中管理することができる。
デメリットとしては、主に2点ある。1点目は、本部に超強力なネットワークのバックボーンが必要であるということだ。各地から録画映像が一気に本部に集中するため、データセンターレベルのネットワーク帯域や録画装置が必要となるケースもある。
デメリットの2点目は、各店舗のカメラ台数を少なくする必要があることだ。例えば、1店舗あたりカメラを20台設置したとして、50店舗あった場合、 1000台分ものカメラの映像を本部で録画しなければならない。
カメラの録画設定値を下げたとしても、本部への負荷は非常に大きくなる。そのため、必然的に1店舗あたりのカメラ台数は少なくなるように設計する必要がある。また、解像度やフレームレートも下げなければならない。
②各店舗に録画装置を設置するパターン
第二に、各店舗にレコーダーを設置するパターンである。メリットとしては、1店舗あたりのカメラ台数を多くすることが出来る点である。例えば、1店舗にカメラ20台を設置したとしても、まず問題となることはないだろう。録画を行う解像度やフレームレートを高く設定しておくことも可能だ。
また、VPN(拠点間通信)などがあれば、本部からブラウザやCMS(統合管理ソフト)で各店舗のレコーダーの映像を一元管理することもできる。
デメリットとしては、管理負荷が大きくなることだ。遠隔地の店舗でレコーダーの故障や何らかの不具合が発生した場合、状況によって、システム管理者は本部から各店舗を訪問してメンテナンスしなければならない。
各店舗の従業員は本業で忙しく、なかなかネットワークカメラシステムのメンテナンスまでは手が回らないため、本部の管理者の負担が大きくなる可能性がある。簡単な障害切り分けでもリモート操作で実施できない場合、現場まで出張して対応しなければならないのだ。
③クラウドサービスを利用する
第三に、クラウドサービスを利用する方法だ。近年、クラウドサービスが充実してきたことから、この形態を選択するユーザーも増えてきている。
メリットとしては、管理コストを劇的に軽減することが出来る点である。また、本部への通信負荷も小さくて済む。①の本部に録画媒体を設置する場合、本部のネットワーク負荷は膨大なものになってしまうが、クラウドサービスを利用すれば、自社でこのリスクを負う必要はない。クラウドベンダーが提供しているデータセンターやリソースに対して録画を行うため、本部の管理負荷は極めて最小化することができる。
デメリットとしては、ランニングコストの問題である。クラウドサービスについてはベンダーによって費用体系は異なるが、一般的にには【利用(録画)時間】や【カメラ台数】などが増えれば、その分、コストも大きくなる。
台数が少なければクラウドサービスのメリットがあるが、非常に多くのカメラの映像をクラウドサービスに録画しようとすると、ランニングコストが大きくなる。
場合によっては、自社でレコーダーを導入し、管理した方が安価となるケースも多いかもしれない。
まとめ
多店舗展開しているユーザーは【①本部に録画装置を設置する構成】【②各店舗に録画装置を設置する構成】【③クラウドサービスを利用する構成】の大きく3パターンが存在する。
どの構成が良いかどうかについては、ユーザーが導入するカメラ台数やIT管理者の有無によって異なる。例えば、1店舗に対して、非常に多くのカメラを高画質で録画しようとした場合、必然的に【②各店舗に録画装置を設置する構成】を選択せざるを得ない。
一方で、全くIT管理者がいないユーザーにとっては、【③クラウドサービスを利用する構成】が利便性が高いだろう。また、その逆で、もともと様々なシステムの管理を本部で一括して管理しているユーザーにとっては【①本部に録画装置を設置する構成】の方が最適であろう。
重要な点は、ネットワークカメラベンダーの提案を鵜呑みにするのではなく、自社にとって、どの構成が最適かどうかユーザー自身で考えることである。