ネットワークカメラ推進会

Network camera promotion and communication

レコーダーの選定・設計で重要なこと

「機能的にできる」と「使ってよい」には違いがある

 

 ネットワークカメラのシステムでは、「機能的には可能であるが、その機能を利用することは推奨できない」というケースが多々、存在している。一般のユーザーにはなかなか理解しにくいかもしれないが、ネットワークカメラの世界では、往々にして存在している。

 

 具体的なケースを用いて説明しよう。

 

  ※なお、以下は、筆者の個人的な考え方であるため、メーカーの正式な見解は確認して欲しい。

 

16台接続できるレコーダーに、カメラ16台を接続する

 

 個別のメーカー名やモデルを出してしまい申し訳ないと感じているが、今回は、システムケイ社のNVR-200シリーズを例に説明する。

 

 システムケイ社のレコーダーには、<NVR-216>というカメラを最大で16台録画ができるモデルが存在している。直感的には「だったら、カメラ16台を最高画質で録画しよう!」と考えるかもしれないが、システム設計には注意が必要だ。

 NVR-216のスループットは48Mbpsである。つまりこれは、レコーダー1台で48Mbpsの処理能力を保有するということである。

 

 もし、カメラ1台の録画の設定値を【4Mbps】とした場合、理論上のレコーダーの負荷は以下の通りだ。

 

    4Mbps × カメラ16台 = 64Mbps

 

 よって、レコーダーの処理能力の48Mbpsを超えてしまい、システムが不安定になるリスクが発生するのだ。

 

 

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システムには常に余力を持たせる

 

 では、仮に、カメラ1台の録画の設定値を【3Mbps】としてみよう。ちょうどレコーダーの負荷は48Mbpsとなる。

 

    3Mbps × カメラ16台 = 48Mbps

 

「これならレコーダーの処理能力の範囲内だから大丈夫!」だと思われるかもしれないが、それは適切ではない。おそらくこの設定値では、システムはやはり不安定となる。

 

 その理由は以下の通りだ。

 

①録画だけでなく、閲覧時にも負荷がかかる。

 

 PCからレコーダーに接続し、映像を閲覧した場合、当然ながら、レコーダーへの負荷は大きくなる。あくまでも単純計算であるが、レコーダーでカメラ16台(48Mbps)分の録画を行いながら、PCでもカメラを16分割表示したとする。その場合、理論上は以下の負荷が発生する。

 

 <録画>48Mbps + <閲覧>48Mbps = 96Mbps

 

 やはり定格値の48Mbpsは超えてしまうのだ。

 

 

 ②想定以上の負荷がかかる場合がある。

 

 ネットワークカメラの映像は、想定よりも負荷が大きくなってしまうことがある。例えば、カメラ1台あたりの設定値を【3Mbps】として設定していた場合も、実際に録画をしてみると【3.5 ~ 4Mbps】程度まで、映像容量が肥大化してしまうケースがあるのだ。

 

 具体的には、ネットワークカメラの映像は<映像の変化量>に応じて、大きくなったり小さくなったりする。蛍光灯のちらつきや木々の揺れ、ヒトの通行量などにより、想定以上に録画容量が大きくなるケースがあるのだ。

 

 定格値の48Mbpsぴったりで設計していると、予期せぬ映像容量の肥大化に耐えきれず、システムが不安定化するリスクがある。

 また、動体検知録画やイベント録画を多用した場合も、システムへの負荷が大きくなるケースがある。

 

 システム設計時には、常に余裕を持たせておく必要があるのだ。

 

 

どの程度、システムに余裕を持たせるべきか?

 

 どの程度、システムに余裕を持たせるべきか?という点については、各メーカーやユーザーの考え方によって異なるため、なかなか回答が難しい。

 

 例えば、カタログ上の定格値を「やや盛って最大値で記載している」メーカーもあれば、「余裕を持たせた安全値で記載している」メーカーもあり、判断が難しい。また、機器や状況によっては、あえて定格値を超えてシステム設計を行うケースさえある。

 

 とはいえ、目安としては『おおよそ定格の半分くらいの負荷』で設計しておくことが望ましいと筆者は考えている。

 

 例えば、カメラ16台を接続できるレコーダーの場合、カメラ1台の設定値を【1Mbps】で設定したとする。この場合、録画で16Mbps必要となる。

 

 もし、ライブ映像で16分割表示させた場合も32Mbpsとなり、定格値の48Mbps以下で抑えることができる。

  ※実際には、16分割すると、分割数が多すぎて逆に閲覧しにくいため、9分割程度で閲覧するケースが多いだろう。そうすると、レコーダーの負荷は理論上、25Mbpsとなり、定格値の約半分の負荷となる。

 

 <録画>16Mbps + <閲覧>9Mbps = 25Mbps

 

 もし、想定以上にデータ容量が膨らんでしまい、一時的に1.3倍くらいの負荷が発生しても、約32Mbpsで定格値以内である。

 

現状の負荷をどのように判断すればよいか?

 

 これまで『 XXMbps以内で設計するように… 』など、データの処理能力を基準に説明を行ったが、この単位そのものが、一般のユーザーには何のことかよく分かりにくいかもしれない。

 しかし、それほど難しいものではないため、現状のシステム負荷の状況をどのように確認すればよいか説明しよう。

 

 この「XXMbps」というのは、俗に『ビットレート』と呼ばれ、1秒間に処理されるデータ量を示している。 

 

 以下は、システムケイ社のNVR-204 MkⅡの画面である。画面右上に心電図のようなボタンがあり、これを押下すると、現状のシステムの状況を一覧表示することができる。

 

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 カメラ1の<ストリーム1>を見てみると【H.264@1920×1080 5fps】で【113kbps】と表示されている。K(キロ)をM(メガ)の単位に修正すると、約0.1Mbpsとなる。

 

 つまり、カメラ1台の録画で0.1Mbpsのデータ容量となっているということである。言い換えると、『カメラ1台のビットレートは0.1Mbps』となる。設計値の1Mbpsよりもはるかに小さいデータ容量となっていることが分かる。

 

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 なお、筆者の環境の場合は、白い壁面しか撮影していないため、非常に低いデータ容量となっているが、実際の映像では、より多くのデータ容量となるだろう。被写体や動きの大小によりデータ容量は変化するのだ。

 

まとめ

 

 *今回の記事では、レコーダーの処理能力およびビットレートを中心に説明を行ったが、ネットワークカメラシステムでは、仕様上可能でも、設計上できない設定などが存在している。

 

 *特に、カメラ1台の録画容量(ビットレート)の値により、レコーダーの負荷に影響するため、システム設計時やメンテナンス時は十分に注意して欲しい。