モデルチェンジはメリットだけではない!?
ネットワークカメラに限らず、新製品のリリースは基本的には喜ばしいことである。これまでに足りなかった機能が付加され、性能が向上するのだから当然と言えば当然だ。
ネットワークカメラはこの数年間で大きく進化した。これに伴い、何度もモデルチェンジや製品の改良が行われている。
新製品のリリースは望ましいことではあるが、ネットワークカメラを販売するベンダーにとっては『製品の移行期は難しいオペレーションが必要とされる』のも事実だ。
例えば、2020年11月現在、アクシスコミュニケーションズ製のネットワークカメラでは、多くの製品が後継機へとモデルチェンジしているが、まさにこの移行期こそ、ネットワークカメラベンダーを悩ませることになるのである。
どういうことか、具体的に説明しよう。
レコーダーの対応が遅れてしまう
まず、課題の1つ目が、レコーダーの対応(動作検証)が遅れることだ。サードパーティー製のレコーダーの場合、新しいカメラがリリースされた直後、すぐにレコーダーのファームウェアが更新され、カメラに対応するということはなかなか難しい。
一般的には、ネットワークカメラの新製品がリリースされてから、しばらくして各レコーダーメーカーが動作検証を行い、新製品への対応を行う。カメラがリリースされてから、レコーダーメーカーが正式対応するまでにはタイムラグがあるのだ。
このタイムラグこそ、ネットワークカメラベンダーを悩ませる原因である。
例えば、AXIS P3225-LVとサードパーティー製のレコーダーを組み合わせて、顧客に対して見積書を提示していたとする。商談が長引き、いざ受注となったタイミングで、AXIS P3225-LVが販売終了となり、後継品としてP3245-LVがリリースされたとする。
この場合、『新製品のP3245-LVは、まだレコーダーが対応していないのですぐに納品ができない』という事態が発生するのだ。
いずれはレコーダーメーカー側で新製品にも対応することとなるが、タイミングによっては新製品のリリースによって納品時期を遅らせなければならないことが起きるのである。
開発のやり直しが必要
新製品リリースの2つ目の課題が、開発のやり直しが必要であるということだ。これは、課題の1つ目とも類似の課題であるが、新製品がリリースされた場合、これに合わせてレコーダーやビューワーソフトも開発のやり直しが必要となる。
例えば、仮にAXIS P3225-LV用のビューワーソフトを開発していたとする。後継品として、P3245-LVがリリースされた場合、必ずしもビューワーソフトで新製品が対応できるというわけではないのだ。
新製品がリリースされた場合、その新製品に応じてビューワーソフト側も再度、システムの改修が必要となるのである。
もちろん、何もシステム改修をしなくても問題なくカメラに接続できるケースもあるが、基本的には新しいカメラがリリースされる度に、各ベンダーは製品の対応の可否について動作検証を実施しなければならない。開発コストがかかるのである。
在庫管理が難しい
新製品リリースの3つ目の課題が、在庫管理が難しいという点である。新製品がリリースされた際に、旧製品の在庫が過剰に多い状態になっていると、不良在庫として旧製品の在庫が残ってしまうのだ。
当然ながら、新製品と旧製品では新製品のほうが性能が高い。そのため、旧製品が売れ残ってしまうというリスクがあるのである。
とはいえ、旧製品の在庫を絞ることも大きなリスクだ。例えば、新製品のリリース時期が2020年12月であった場合、旧製品の在庫も少なくとも同時期までは残しておく必要がある。
もし、在庫管理を失敗してしまい、20年10月ごろには旧製品を完売してしまったとする。そうすると、約2か月間は、納品ができなくなってしまうのだ。これは機会損失である。
過剰在庫になることはリスクであるが、欠品期間が長くなってしまうことも大きなリスクなのである。製品の移行期には、非常に難しい在庫管理のオペレーションが求められる。
それでも新製品への移行が必要
このように、モデルチェンジには様々なリスクが存在している。しかし、筆者は多少のリスクがあったとしても、新製品への移行は行うべきであると考えている。
ネットワークカメラは近年、大きく進化することができたが、これは各カメラメーカーが切磋琢磨し、モデルチェンジを繰り返し、飛躍的にネットワークカメラの性能を向上させてきたからだ。モデルチェンジを行わなければ市場から取り残されてしまうだろう。
これからもネットワークカメラはAIにとっての目の役割として、様々な利用シーンでの活躍が期待されている。今後も、世の中をより良くするためにネットワークカメラは進歩していくべきなのである。