映像がボヤけていることがある
ネットワークカメラを設置した場合に、固定カメラであるにもかかわらず、映像がボヤけて鮮明に表示ができないことがある。例えば、以下のような映像だ。
※なお、ここで言う『固定カメラ』は、バリフォーカルレンズやオートフォーカス対応の焦点距離が可変タイプのものではなく、単焦点のレンズを指している。
対策として(フォーカスリングによる調整)
このように固定カメラ(単焦点レンズ)で映像がボヤけている場合は『フォーカスリング(またはピントリング)』を回すことで、改善することがある。
※以下より、表記をフォーカスリングに統一して説明するが、ピントリングと同じ意味だと捉えて欲しい。
画角調整を行っていると、レンズ面とCMOSセンサーの間にわずかに距離が空いてしまうことがあり、フォーカスリングを締め付けることで改善できるのだ。
<指でくるくると回すことができるタイプ>と<附属のオプション品>で回すことができる場合がある。
締め付けした後
実際に、ピントリングを強く締め付けると、以下のようにぼんやりとした映像がよりシャープになった。
AXIS M1065-Lの場合
AXIS M1065-Lの場合は、フォーカスリングのほか、フォーカスロックリングの2つを使って調整を行う。
●具体的な手順として●
①白い部分のフォーカスロックリングを反時計周りに回して緩める。
②レンズに近い黒い部分のフォーカスリングを回して、ピントが合うまで調整する。
③フォーカスロックリングを時計周りに回して固定させる。
購入したカメラの映像がぼんやりしていると不良品だと思われるかもしれないが、そうではなく、ちょっとだけフォーカスリングを回すだけで改善することがあるので試してみて欲しい。
単焦点レンズと焦点距離が可変タイプのレンズの違い
それでも、ピントが『なんとなく合っているような…合っていないような…』判断しにくいような微妙な映像の場合は、レンズそのものの構造上の限界である可能性もある。
あくまでも一般論となるが、ネットワークカメラで用いられる単焦点レンズの場合、映像全体にピントが合うように設計されている。逆にいうと、広くピントが合うように設計されているため、特定の被写体に対してフォーカスを合わせようとすると、ピントが合っていないように感じてしまうのだ。
全体をまんべんなく俯瞰的に撮影する場合は、単焦点レンズでも問題ないが、特定の被写体に対してスポット的にピントを合わせる場合は、バリフォーカルレンズやオートフォーカス対応のズームレンズが望ましい。
バリフォーカルレンズを利用する場合のコツとして
バリフォーカルレンズでピント調整をする場合には、コツがあるので参考までに記載しておく。
一眼レフカメラを保有されている方であればご存知であると思うが、レンズを絞ると被写界深度は深くなり、レンズを開くと被写界深度は浅くなる。
言い換えると、レンズがより閉ざされた状態では映像の中でピントが合う範囲が広く、レンズがより開いた状態では、ピントが合う範囲が狭いということである。
例えば、ポートレート撮影などを行う場合は、あえてレンズを開き、被写界深度を浅くすると、被写体だけが浮き出て、味のある写真を撮ることができる。
ピント合わせは、レンズを開いた状態で実施する
ネットワークカメラの場合、ピントを合わせる際は、できるだけレンズを開いた状態で実施することが望ましいと考えられる。
例えば、日中にレンズを絞った状態でピント合わせをしていた場合、明るい時間帯は問題がないが、夕方や夜間になりレンズが開いてしまった場合、被写体の一部がボヤけてしまうリスクがあるためだ。
レンズを最大に開いた状態でピント合わせを行っておけば、夕方や夜間になっても、理論上は、それ以上、映像の一部がボヤけることはないためである。
実際の施工において、複数台のカメラを設置する場合は、このようなシビアなピント合わせを行うことは少ないかもしれないが、特定の被写体をモニタリングする場合は、このように精細なフォーカス合わせが必要となることもあるので覚えておいて欲しい。

参考(F値)について
参考として、ネットワークカメラのカタログに記載があるF値についても補足しておく。F値とは、焦点距離を有効口径(レンズを最大まで開いた状態の内径)で割った値のことである。
理論上は、F値が低いレンズの方が多くの光を取り込むことができるので、暗い場所での撮影に強くなるが、被写界深度は理論上、浅くなり、ピントが合わない範囲が広くなってしまう。
まとめ
*固定カメラ(単焦点レンズ)で映像がボヤけている場合は、フォーカスリングを回すことで改善されることがある。
*固定カメラ(単焦点レンズ)は、全体的にピントが合ったような状態となるため、逆に特定の被写体に対しては、ピントが合っていないように感じる場合もある。
*レンズは絞った状態だと被写界深度が浅くなり(ピントが合う範囲が狭くなり)、開口した状態だと、被写界深度が広くなる(ピントが合う範囲が広くなる)。
*バリフォーカルレンズ(焦点距離が可変)で、画角調整やピント調整を行う場合は、理論上、レンズを最大まで開口して実施することが望ましい。
(記事の添付写真に誤りがあり訂正 2019/10/14)