カタログは基本的に良い面しか記載していない!
筆者は繰り返し説明しているが、『ネットワークカメラのカタログに記載されている内容はあくまでも参考程度』として見ておくべきである。
各メーカー毎に、スペックの測定基準が異なることも多く、必ずしもフェアな条件下で比較されたものではないためだ。あくまでもカタログは目安程度に見ておくことを推奨している。
最もリスクであるのは『カタログの記載内容を鵜呑みにすること』である。
ベンダーのカタログや提案書には、基本的にメリットしか記載されていない。仮に導入におけるリスクや注意事項などが記載されていたとしても、非常に小さく記載されているだけだ。一般のユーザーはなかなか気づきにくいように記載されている。
カタログや提案書に記載された内容を鵜呑みにしてしまうと、思ったような導入効果が得られないため十分に注意して欲しい。今回は一例を紹介しよう。
追尾機能の運用上のハードルは高い
ネットワークカメラの機種によっては『追尾機能』を保有するモデルも存在する。画角の中に入った被写体を追いかけて撮影する機能だ。
カタログの内容だけを見ると『きちんと被写体を追いかけて撮影してくれる』ように感じてしまうかもしれないが、実運用で被写体を適切に追いかけることは非常に困難だ。事実上、不可能と言っても良い。
ネットワークカメラの画像解析は基本的は<映像の差分>によって物体を認識している。そのため、日光や車両のヘッドライトなど、様々な外的要因によって誤検知をしてしまうリスクがある。
そもそも、画角の中に2つ以上の被写体が入ってしまった場合は、どちらかの被写体しか追いかけることができない。
カメラの機能としては追尾機能を保有していたとしても、実際に運用で利用できるかどうかは別の問題があるのだ。詳しくは以下の記事を読んでほしい。
サーマルカメラは人物や被写体の特定はできない
ネットワークカメラの中にはサーマルカメラと呼ばれるモデルが存在する。これは、遠赤外線の放射量を見て撮影ができるもので、煙がある場所や真っ暗な環境下でも撮影することが可能だ。
以下のアクシスコミュニケーションズのサイトを参考にして欲しい。
ただし、ここで重要な注意点が『サーマルカメラは物体の存在を確認する(検知する)ことはできたとしても、その物体が何であるのかを識別することはできない』のだ。
上記URLの映像をご覧いただくと分かるかと思うが、撮影した被写体が『誰であるのか』を判断することはできない。サーマルカメラ1台ですべてを解決できるものではないのだ。
被写体や人物を特定するためには、やはり可視光で撮影する通常のネットワークカメラが必要となる。
また、サーマルカメラにはジョンソン基準と呼ばれる基準が存在している。これは、サーマルカメラが何m程度まで撮影ができるのかという基準となる。しかし、この数字を鵜呑みにしてはならない。
例えば『400m先まで検知可能』と記載されてあったとしても、これはあくまでも400m先にある被写体の遠赤外線の放射を検知できるということである。
実際には、1.5ピクセルなど極めて小さく、豆粒以下で表示されるので、肉眼で物体を確認するのは、なかなか難しいケースも多い。
400m先の被写体がくっきりと見えるわけではないため、誤解がないよう注意して欲しい。
Detection and verification with Axis thermal cameras
カメラの機能を絶対的に利用できるわけではない
非常にややこしい点であるが、ネットワークカメラ本体で機能を保有していたとしても、レコーダーや閲覧装置でその機能を受ける仕組みがないと、機能を活用できるわけではない。
例えば、ネットワークカメラにはほとんどの機種において『モーション検知機能』が搭載されている。直感的にはカメラ側で『モーション検知機能』を保有していれば、レコーダーでもモーション検知機能に対応していると思われるかもしれないが、必ずしもそうではない。
カメラ側でモーション検知機能を持っていたとしても、レコーダーがその信号を受け取る機能を保有していなければ、モーション検知機能を利用することはできないのだ。
特に、サードパーティー製のレコーダーの場合、ネットワークカメラのすべての機能と連動できるわけではないので注意が必要だ。そもそも、カメラとレコーダーの組み合わせによっては、レコーダーへの登録や録画すらできないこともあるので、システム設計時は注意が必要である。
また、ネットワークカメラだけでも、そのスペックをフルに活かせないケースもある。例えば、フレームレートが60fpsに対応しているカメラがあったとする。
しかしながら、東日本では電気の周波数の違いにより50fpsしか出せないこともある。また、逆光補正(ワイドダイナミックレンジ)機能を保有すると、半分の30fpsまでしか出せないケースも多い。
カメラの処理速度や条件によっては、フルスペックの性能が出せるわけではないので注意して欲しい。
まとめとして
*カタログには、原則として良い面しか記載されていないので、鵜呑みにしてはいけない。
*カメラとレコーダーの組み合わせによっては、活用できない機能も存在する。