ネットワークカメラ推進会

Network camera promotion and communication

美しい構成とは?

その構成は正しいですが、適切ではありません。

 様々なネットワークカメラシステムを見ていると「美しい」と感じる構成と、その逆で「ちょっと残念」と感じる構成が存在している。ネットワークカメラシステムは自由度が高いシステムであるため、様々な機器を選定できる一方で、望ましくない機器の組み合わせをしてしまうリスクも高くなる。

 

 まず、「美しくない構成」の具体例について説明することにする。なお、以下については、筆者の主観をかなり多く含むものと理解して欲しい。

 

①機器の数(障害ポイント)が多くなる。

 第一に、機器の数が余計に多いケースであかる。機器の数が増えると、障害が発生した場合に「どの機器で故障が起きているのか?」探す手間や工数が増えるため、解決に時間がかかってしまうことがある。できるだけ構成はシンプルにした方が理想である。

 

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 例えば、上記のようにHUBやインジェクターの数が無駄に多いような場合である。配線の効率性を重要視し、LANケーブルの取り回しの観点からHUBの数が増えることは問題がないが、そうではなく、単純に選定者のスキル不足の場合、障害ポイントを増やしてしまうことになる。

 

 改善策としては、以下のようにすると、システム構成としてはよりシンプルになる。PoEインジェクター(1ポート用)ではく、複数ポート(カメラ)に対応したPoE HUBを導入するのである。

 事前の障害対策としても、バックアップ機としてPoE HUBを1つ保有すればよいだけなので、結果としてコストを抑えることができる。種類の異なる機器を増やしすぎると、障害対策としても、多種類のバックアップ機を用意する必要があるため、コストが大きくなり管理が煩雑となる。

 

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SFPモジュールを利用する

 このように機器構成をシンプルにするのはLANケーブルだけではない。光ケーブルを利用する際は、SFPモジュールを利用するとシステム構成はよりシンプルになる。光ケーブルを利用する場合、メディアコンバーターという光ケーブルとLANケーブルを変換する装置を用いて構成を組むが、SFPモジュールを利用すると、構成としては非常にシンプルになる。 

 

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② ネットワークの経路を考慮していない

 第二に、ネットワークの経路や帯域をほとんど考慮していない場合の構成である。これも配線の効率性を考慮したものであれば問題はない。また、ネットワークの構成の方法にはリング型やスター型など、様々な形態があるが、それを意図して構成する場合は問題ではない。

 問題となるのは、知らず知らずのうちに、ネットワークの帯域を無駄に大きくしてしまっているような場合である。特に、カメラの増設を繰り返し行ったような場合は、このような構成になってしまうことがある。

 例えば、以下のような構成の場合、PCに一番近いPoE HUBにはカメラ3台分の負荷がかかってしまう。台数が少ない場合は全く問題はないが、大型案件においてPoE HUBのカスケード接続をしすぎると、特定のHUBに大きな負荷がかかってしまう。

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 上記のようにHUBのカスケード接続を連続で行うと、末端のHUBは問題ないが、PCに近くなればなるほど負荷が大きくなる。

 そこで、以下のように集約用のスイッチを設置すると、通信経路はよりシンプルになる。 集約用のHUB(コアスイッチ)だけ高性能なものを選定すれば、末端のHUB(エッジスイッチ)は低速なモデルの選定も可能である。

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③全体的にアンバランスである

 第三に、特定の機器だけハイスペックであったり、特定の機器だけロースペックのモデルを選定しており、コンセプトが不明確であるケースである。

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 例えば、上記のようにカメラや末端のPoE HUBだけ高スペックのモデルを選定し、集約用のHUBやPCが低スペックなケースである。特に、複数の業者から見積書を取得していると、だんだんと性能よりもコストパフォーマンスが重要視されるようになり、特定の機器が妙に低スペックのモデルが選定されてしまうことがある。

 特に、サーバーやPC、モニタは汎用品も多いため、コスト削減の対象となり、極端にスペックが低くなってしまうことがある。これも、選定者やユーザーが意図して、納得した上で構成を組んだ場合は問題がないが、商談の成り行きでたまたまアンバランスな構成になってしまうことは望ましくない。最悪の場合、これが原因で障害が発生してしまうことがある。できれば、川上から川下まで同じくらいのスペックで揃えることが理想である。

 

④ メーカーがバラバラすぎる

 第四に、あまりにも多くのメーカーの製品を組み込みすぎて、問い合わせ先が多くなってしまうケースである。これも選定者やユーザーが意図して、システム設計をしているのであれば問題がないが、たまたまそのようなシステム構成になったのであれば、問題である。

 具体的には、障害発生時である。例えば、システム構成をA社とB社だけのモデルを選定していれば、障害発生時もA社かB社のどちらかに問い合わせをすれば解決することができる。しかしながら、A社、B社、C社、D社・・・と、あまりにも多くのメーカーを入り乱れて構成を組んでしまうと、障害発生時にどのメーカーの製品に問題があるのか切り分けを行うことが難しくなってしまったり、問い合わせ窓口が多くなってしまうことがある。

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  ネットワークカメラシステムは、自由度の高いシステムであるため、顧客ニーズによって最適な機器を選定ができるメリットはあるが、あまりにも無意識的にバラバラのメーカーの製品を組み合わせていると、導入後のユーザーメリットは低下してしまうことがある。

 例えば、ネットワーク機器はC社に統一し、PCやサーバー、モニタはE社に統一するなど、できるだけメーカーの数を減らすと、導入後の煩雑性は避けることができるであろう。

 

 なお、上記はあくまでも中小向けのシステムを指している。大規模システムであれば、様々なメーカーの製品を組み合わせて構成を組むことがある程度避けられず、(あるいは特定のメーカーの製品に偏ると、それはそれでデメリットもあるため)あくまでも、中小規模のシステムにおける一般論だと考えて欲しい。

 

まとめ

 いかがだろうか? システム構成として、間違っているわけではないが、導入後のアフターフォローなどを考慮すると、おのずと「美しい構成」というものが見えてくる。

 

 あくまでもケースバイケースかもしれないが、システムを選定するベンダーは単に顧客のニーズに合った製品を選定するのではなく、より「美しい」と思える構成を組むように努めて欲しいと筆者は願っている。