ネットワークカメラ推進会

Network camera promotion and communication

要求定義を行う重要性

要求定義とは何か?

 【要求定義】とは『お客様が何を求めているのかというニーズを取りまとめて、きちんと明文化しておくこと』である。ネットワークカメラシステムにおいては、この要求定義がクレームを防ぐ上で非常に重要となる。

 類似する言葉として【要件定義】というものがある。これは具体的にどのようなシステムを構築するのか技術者の視点で必要な機能や仕様を明確化するのに対して、【要求定義】ではその前段階で顧客の視点で必要とする機能や仕様を明確化する行為である。

 料理に例えると、要求定義が『洋食を食べたい』という希望であるのに対して、要件定義は顧客のイメージを具体的に実現するために必要な『レシピを作成する』ような行為である。要求定義が『洋食を食べたい』という、非常に曖昧な内容である場合、当然ながら顧客のニーズに合わない料理を作ってしまう可能性が高い。洋食の中でも『肉料理を食べたいのか?魚料理を食べたいか?』『ステーキを食べたいのか?ハンバーグを食べたいのか?』『どのようなソースが好みか?』など、具体的な顧客ニーズを引き出す必要がある。

 ネットワークカメラシステムにおいては、商談の初期段階で顧客がどのようなニーズを持っているのか、明確化しておくことが非常に重要である。システム設計が完了した後に新たなニーズが発生した場合、設計をやり直ししなければならないケースも少なくない。システムの規模が大きくなるほどシステムの設計は大変な作業となるため、商談をスムーズに進めるためにも、要求定義が重要となるのだ。

 

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顧客自身がニーズを上手く伝えられない

  ネットワークカメラシステムにおいては『顧客自身がニーズをうまくベンダーに伝えることが難しいという問題』がしばしば発生する。例えば、先ほどの料理で例えると、顧客はメニューさえ見ればどのような料理が食べられるのかある程度、イメージすることができるであろう。

 しかしながら、ネットワークカメラシステムにおいてはカタログを見るだけでは、実際にどのようなシステムが最終的に構築されることになるのかイメージすることは極めて難しい。『解像度』『フレームレート』『ビットレート』『焦点距離』『最低照度性能』『水平画角・垂直画角』『PTZ』『冗長化』『UPS』『タイムサーバーの有無』『JPEGH.264』・・・などなど、一般の方ではなかなか耳にしない言葉も多いため、ニーズをまとめて伝えること自体が困難なケースがあるのだ。そのため、「うちの事務所を見て、最適なシステムを提案してくれ!」などと、システムの選定をベンダーに丸投げしてしまう顧客も多い。そのため、導入後に「こんなはずではなかった!!」「全然、見えないじゃないか!!」とクレームになってしまうのだ。

 さらにいうと、どんなに顧客ニーズをきちんと定義していても、実際には思い通りにシステムが稼働しない場合も多い。しつこいかもしれないが、料理に例えると、顧客のニーズのとおりにレシピを考えたつもりでも、実際に調理(工事・納品)をしてみると思ったような味(仕組み)が実現できない場合もあるのだ。

 筆者は、ネットワークカメラシステムを設計するベンダーはなかなか大変な作業を行っていると感じている・・・。

 

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どのようにすればトラブルを防ぐことができるのか?

 では、このようにシステム設計が難しい状況において、どのように対処すれば要求定義を行い、トラブルを防ぐことができるのか考えてみよう。

 まず、顧客は【カメラを設置する場所の図面を用意する】ことが最初のステップである。どのエリアで何の被写体を撮影したいのか図面上に記載しておくことが重要である。モニタリングをするためのレコーダーやモニタはどこに何台設置するのか?また、どの程度の録画期間が必要であるのか?など、希望するイメージをできるだけ文書にまとめておくことが望ましい。

 また、ある程度の“予算感”があるのであれば、商談の初期段階でベンダーへ伝えてほしいと筆者は考えている。ネットワークカメラシステムには様々な性能のモデルがあり、廉価なモデルから高価でハイスペックなモデルまで存在する。何も基準となるコストの指標がなければ、廉価なモデルとハイスペックなモデルのどちらで設計すべきであるのか分からず、まったく的外れなシステムを構築してしまうことになってしまう。事前に予算感を伝えることでよりスムーズな導入が可能となる場合もあるのだ。

 

 一方、提案を行うベンダー側は、顧客の『ざっくりとしたニーズをより明確化する』作業が必要となる。顧客が図面上に描いたカメラに対して、「防水対策は必要か?」「どの程度離れた被写体を撮影したいのか?」「首ふりやズーム操作は必要か?」「夜間はどの程度暗くなるのか?」「動体検知は必要か?」など、設置環境や利用上のニーズをヒアリングにより引き出すことが重要である。抜け漏れがないようにヒアリングシートを作成して置くことが望ましい。

 また、一度、要求定義が完了した後に、次々と五月雨式に顧客ニーズが追加されてしまうと何度も何度もシステム再設計する手間が発生するため、期限を設けて、その期日までに要求定義を完了するように心がけたい。くれぐれも納品の途中で顧客から追加のニーズがでないように、商談時のニーズをドキュメント化することが身を守る上でも重要な作業となる。

 

まとめ

 近年、ネットワークカメラは急激に市場が拡大し、多数の業者が参入し、その商品やソリューションも様々なものがリリースされている。

 その一方で、十分知識がないままシステムを導入するユーザーやベンダーも少なくない。トラブルを防ぐためにも、システムを導入する『目的やニーズ』を明確化することは、顧客およびベンダーにとってもメリットがあることであるため、漏れがないように要求定義を行うように努めて欲しい。