ネットワークカメラ推進会

Network camera promotion and communication

全方位カメラ(360度)は万能か?

全方位カメラとは何か?

近年、各メーカーから全方位カメラと呼ばれる360度の撮影が可能なカメラが発売されている。

ここで示す360度というのは、パン(首振り)によって周囲全体が見渡すことができるのではなく、

首振り操作をしなくても魚眼レンズにより周囲全体が見渡すことができるカメラを指す。

 

通常のネットワークカメラであれば、画角が広いものでも100度程度であるので、360度見渡すことができるカメラは非常に魅力的に思えるだろう。

 

まずは、下記の動画をご覧いただきたい。台湾メーカーのVIVOTEK社のカメラの紹介動画である。

全方位カメラのメリット

動画を見てもわかる通り、全方位カメラの最大のメリットはエリア全体を閲覧することができる点である。

部屋の中心にカメラを1台設置すれば、部屋全体を撮影できるためカメラの台数を減らすことができる。例えば、小売店などで天井に全方位カメラを設置した場合、顧客の動線(入口からどのように売り場に移動しているのか?)を確認することができる。

さらに画面の分割機能を利用すれば、丸い画を通常のカメラのように分割して表示することもできる。まさに、画期的な製品なのだ。

 

ユーザーの中には全方位カメラが現在の主流になっていると思われている方も多い。

しかし、現実には360度の撮影ができる全方位カメラはデメリットもあることを理解しておかなければならない。実は、全方位カメラを設置できるシーンは意外と少ないのだ。

以下、全方位カメラのデメリットをまとめておく。

 

全方位カメラのデメリット

 

デメリット1:真上からの撮影になってしまう

監視カメラを設置するユーザーの多くが、被写体の顔や身なりを撮影したいと考えている。しかし、全方位カメラの場合、ほぼ真上からの撮影となるため、場所によっては「頭と肩しか撮影ができない」ことがある。ヒトの動きを閲覧することについては適しているが、ヒトを認識する用途としては必ずしも適切とは言えない。

 

デメリット2:魚眼カメラのように映像が歪む(またはボヤける)

上記の映像でも紹介したとおり、全方位カメラは4分割表示など、映像を補正して通常のカメラのように閲覧することも可能である。しかしながら、どうしても映像の外枠に近い部分については映像の歪みが大きく、補正をかけてもボヤけたような画になってしまう。細部を確認したい用途については不向きとなる。

 

デメリット3:映像が重たい(または表示の負荷が大きい)

これは技術的な問題であるが、全方位カメラで適切な画を取得したい場合、必然的に通常のネットワークカメラよりも高解像度で映像を送信することとなる。そのため、1台のカメラにおける通信量が大きくなってしまうのだ。極端な例をいうと、通常のカメラの4~5倍の通信量が必要となるケースもある。とにかく映像が重たいのだ。

 

スペックの高いレコーダーを利用する場合はさほど影響がないが、ロースペックのレコーダーの場合、フリーズしてしまうリスクが高まる。また、全方位カメラはモニタに表示する場合もレコーダーの負荷が大きくなるため、設計時は注意が必要である。

 

設置場所によっては全方位カメラを1台設置するよりも、通常のカメラを対角線上に2台設置した方が適切な画像が得られ、データ容量も削減できるケースもある。

 

全方位カメラの最適な設置場所とは?

 

デメリットばかりを強調しすぎてしまったが、全方位カメラは今日のネットワークカメラにおいて「絶対に必要なカメラ」であることは間違いない。

スーパーやショッピングモールなどでヒトの混雑状況や動線をモニタリングするのには最適なカメラである。

また、冒頭に記載したように、広角タイプのカメラでも水平画角は100度程度であるため、設置場所によっては全方位カメラを活用しないと適切に撮影ができない場所も存在する。

※例えば、廊下がT字路や十字路の場合、全方位カメラの設置が望ましい。

 

決して万能とは言えないが、設置場所によっては非常に有効であるということを理解いただきたい。