ズームカメラで発生する画像のにじみ
ネットワークカメラの中には、光学20倍や光学30倍など、非常にズーム機能に優れたモデルが存在している。このようなモデルを利用して撮影すると、50mくらい離れた被写体でも撮影することができる。
しかし、この光学ズームに優れたモデルについては、メーカーによって比較的、高価な製品と安価な製品が存在している。カタログスペックだけを見ると、同じような仕様であっても実際の映像を見ると、その精度は大きく異なる場合がある。その1つの要素が色収差である。
まずは、以下の動画をご覧いただきたい。
※当サイトとは無関係の動画であるが、【1分30秒】くらいをご覧いただくと色収差がどのようなものか分かるだろう。ズームアップをした際に、色がにじんでしまい、ぼやけたような映像になっている。
色収差とフィルムルック【BMMCC/OLYMPUS M.ZUIKO DIGITAL 40-150mm】
色収差が発生する原因はカメラ側の問題だけではなく、撮影する環境にもかなり依存するところはあるが、ネットワークカメラにおいては、やはりレンズそのものの精度も影響する。
なぜ色収差が発生するのか?
なぜ、このような色のにじみが起きてしまうのかというと、「光の屈折率が色によって異なるため」である。
本来、カメラで被写体を撮影した場合、赤・緑・青など様々な光の焦点を1か所に集めることで、像を適切に描写することができる。
しかしながら、色によって光の屈折率が異なるため、収束地点にズレが発生してしまうことがある。これが色収差である。
これは筆者の偏見を含むものであるかもしれないが、やはり光学技術に優れたネットワークカメラのメーカー(例えば、キヤノンなど)はこの色収差が起きにくい印象がある。
ズームアップをした場合、レンズの精度が悪いモデルの場合、ズームアップをしても被写体がぼんやりとした映像で、なんとなく滲んだような画になってしまう。一方で、レンズの精度が高いモデルの場合、ズームアップをしてもはっきりと被写体を捉えて、よりシャープな映像を得ることができるのだ。
このような色収差については、カタログには記載がなく実際に実機で撮影してみないと評価ができないポイントである。
色収差発生の有無が重要となるシーン
一般的な防犯対策用の広角カメラの場合、あまりこの色収差は重要なポイントではない。あまりにも色収差がひどい場合は除くが、多少の色収差が発生していたとしても、ある程度、被写体の人相や動きが撮影できていれば、犯人を特定することができるためだ。
一方で、この色収差の精度が極めて重要となるシーンが存在する。その1つが製造業におけるネットワークカメラの活用である。
近年では、製造現場においても“人手不足の傾向”があり、生産性の向上が課題の1つとなっている。これを解決する方法として、ネットワークカメラが用いられるケースがある。例えば、これまで従業員が直接、巡回して目視で確認しているような業務があった場合、これをネットワークカメラに代替することで、1か所で集中監視することができる。また、上記のシステムのように、アナログ式の計器などをネットワークカメラで撮影してデータ化するようなソリューションも存在している。
このように、かなり細かい部分までモニタリングが必要な利用シーンにおいては、少しの色収差により、適切な結果が得られない場合がある。製造業においては、やはり安価で精度の悪いカメラではなく、極めて精度が高いズームを保有するカメラが必要だ。
赤外線利用時の注意点
この光の屈折率が異なる点であるが、可視光はもちろん、実は赤外線も波長が異なるため注意が必要だ。例えば、ナンバープレートを撮影するシーンである。
車両ナンバー認識デモ(SK-VMS(映像管理システム)連携)
ナンバープレートをネットワークカメラで撮影する場合、可視光で撮影しようとすると、白色の投光器が必要なため、運転手にとって眩しいと感じてしまうリスクがある。一方で、赤外線投光器を利用してモノクロで撮影した場合、運転手には赤外線の光は見えないため、違和感なく導入することができる。
ただし、この赤外線を利用してナンバープレートを撮影する場合に注意すべき点が、可視光と赤外線では、光の波長が異なるということである。カラーで撮影した場合に、バッチリとナンバープレートとフォーカスを合わせることができても、赤外線を投射してモノクロで撮影すると、うまくピントが合わず、ぼやけた映像になってしまうことがある。これでは適切にナンバープレートの画像を撮影することができない。
ナンバープレートを赤外線で撮影するためには、赤外線を利用しモノクロで撮影した場合もしっかりとフォーカスが合わせられるカメラが必要となる。ナンバープレートを認証するようなソリューションを導入する際は、上記の点は十分に注意して欲しい。
いかがだろうか? 繰り返しになるが、この色収差やフォーカスの精度は、残念ながらカタログを見ただけでは、その良し悪しを判断することは非常に困難である。できるだけ実機を利用したテストを行ったり、導入実績のあるカメラを採用することが望ましい。