日本におけるトラブル時の傾向
ネットワークカメラシステムだけのことではないが、あらゆるシステムにトラブルは付き物である。
どんなに冗長性に優れたシステムを構築していたとしても、問題が起きるときはある。ネットワークカメラシステムの場合、カメラ本体だけでなく、HUBやレコーダーなど様々な機器を組合せて構成されるため、障害のリスクは高い。まして、ほぼ24時間365日動かしているのだから、故障や問題が起きても全くおかしくない。
では、このような障害が起きたときに何をするべきか考えてみよう。なにか問題があったらすぐに納品したベンダーに電話したい気持ちもわからなくないが、まずはユーザー自身でやれることがないか考えて欲しい。
そうしなければ、小さな不具合であっても出張費用や修理費用、技術費用を請求される可能性があるためだ。
日本国内の市場においては納品後のトラブル対応に関するルールが、良くも悪くも曖昧なケースが多い。本来は、保守契約に未締結な場合、納品後のトラブルでベンダーを頼ると、それ相当の技術費用や修理費用を請求されるのだが、どうも日本ではその線引きが曖昧で、本来請求すべき費用をベンダー側が無償対応しているケースが見られる。
一見、ユーザーにとってはメリットがあるように見えるが、実はいつまでもそのベンダーに依存し、自立を阻害する原因となる。実際に、ベンダーの技術担当者が突然退職してしまうと「誰も導入したシステムのことがわからない。」という属人的な状況に陥ってしまうのである。アフターサービスは有償であるということを理解してほしい。
さて、前置きが長くなったがトラブルシューティングの方法について説明しよう。
トラブル対応の方法
①納品された資料や書類を確認する
まず、最初にユーザーがすべきことは、ベンダーから納品された資料や書類を確認することである。ベンダーによって納品内容は様々であると思うが、丁寧な業者の場合、システム構成図や設定資料が納品されるケースがある。まずは、システムのどの部分にトラブルが起きているのか特定するためにも納品物を確認する必要がある。
ベンダーによってはトラブル発生時の「チェック項目」や「マニュアル」を作成している場合もあるためチェックしておきたい。また、合わせて「保証書」の有無も確認しておく必要がある。
②物理的な原因がないか考える
最も単純なことであるが、LANケーブルや機器の電源が抜けていないか、物理的な衝撃がなかったかやホコリが機器に溜まっていないかなど確認すべきだ。
実際の例として私の経験を書くが、ある日、突然ユーザーからクレームの電話があった。内容としては「カメラの映像が映らない!今すぐなんとかしろ!」というものだった。その後の対応で、実はユーザー自身がHUBの電源を知らず知らず抜いていたことが分かった。もう少し冷静に確認していれば、ユーザー自身で早く復旧できたはずだ。
③再起動する前にログを収集する
実はネットワークカメラのシステムトラブル時に再起動をするとすぐに解決することも多い。これは一般的な家電製品やPCでも同じことが言えると思うが、ずっとシステムを起動させたままにしておくと、不良なデータのようなものが蓄積し、これが原因でトラブルになっている場合が多い。そのため、故障が起きるとすぐに再起動したくなる気持ちは分かるが、少しだけ待って欲しい。
ネットワークカメラは再起動を行うと、ほとんどの機種でログデータがリセットされる。そのため、再起動の前に操作マニュアルに従いログを収集することが望ましい。
また、何時何分に何が起きたのかメモを残しておくと、ログ解析時に役立つ。また、必要に応じて不良機器の状況を写真や動画に撮っておくとよい。
④システムを再起動する
上述のとおり、障害の多くは再起動で解決する場合が多い。また、再起動の際はいわゆる再起動のボタンではなく、一度、完全にシャットダウンさせてから、電源などが不安定になっていないか確認し、起動することが望ましい。
⑤ベンダーへの連絡
再起動でも解決しない場合、ベンダーへの連絡が必要となる。なお、上述の通り、内容によっては有償対応となるので留意して欲しい。また、ベンダーに連絡する際に、取集したログデータや写真データなどを事前に送信しておくと、問題解決を早くすることができるだろう。
なお、レコーダーなどを修理に出す場合、基本的にはデータがリセットされることもある。
ログの収集など難しいと感じられたかもしれないが、ネットワークカメラシステムでは「障害の原因がどこにあるのか?」という切り分け作業から始めなければならないため、正確な障害の経緯とログデータが重要である。
使いたいときにシステムが動いていないと、どうしても腹立たしい気持ちになるかと思うが、まずは冷静に何か原因がないか考えておくと障害復旧を早めることができるであろう。