ネットワークカメラ推進会

Network camera promotion and communication

何ピクセルあれば、ヒトを識別できるか?

感じ方は人それぞれ

時々、ネットワークカメラを検討しているユーザーから

『このカメラは何くらい離れた場所のヒトを撮影することができますか?』という質問を受けることがある。

このような質問を受けた場合、筆者はとても困ってしまう。なぜならば『ヒトを撮影できているという基準や感覚』は個人でバラバラであるためである。

筆者は「このカメラで遠くのヒトも撮影することは可能ですが、相対的に被写体は小さくなります…」としか答えることができない。

例えば、下記の写真をご覧いただきたい。

30m~50m程度離れた交差点の中央に、白いカバンを持った女性が撮影できている。この状態を『ヒトが撮影できている』と判断する人もいれば、『これは被写体が小さすぎて撮影できているとは言えない』と判断する人もいる。

「誰か?」という個人までは特定できないものの『黒いパンツに白い靴を履いていて、白系のコートを着ている』というところまでは特定ができる。また、動画の場合、歩き方にも個人差があるため、意外と時間をかけて調べれば人物まで特定ができてしまうこともある。

 

この写真では最も近い<赤枠のヒト①>についてはモザイク処理がされており、明らかに個人が特定できるレベルで撮影ができている。また、そこから5~7m程度離れていると想定される<青枠のヒト②>についてもモザイク処理がされており、個人の特定ができるものと想定される。さらに、そこから20~30m程度離れている<緑枠のヒト③>も実はモザイク処理がされており、場合によっては個人の特定が可能である。

この写真を見て、あなたは「何メートルまでヒトの撮影ができる」と判断するだろうか?

「10mくらいまでであればヒトの撮影が可能です」と言う人もいれば、「30mくらい離れてもヒトの撮影が可能です」と言う人もいるだろう。ヒトの感覚というものは極めて曖昧で個人差があるものだ。やはり筆者は「このカメラで遠くのヒトも撮影することは可能ですが、相対的に被写体は小さくなります…」としか言いようがないのである…。

「何メートルくらい離れた場所のヒトを撮影することができますか?」という回答は、非常に難しい問題なのだ。

 

AXIS社の考え方(欧州基準)

このように難しい問題に対して、AXIS社では下記のサイトで明確な基準を示している。

www.axis.com

 

上記URLに記載されていることを要約すると、下記の通りである。

①ヒトがいるという存在に気づくことが出来る<検知>というレベルでは「顔で4ピクセル」確保できていればよい。

②表示される個人が以前に表示された個人と同一人物であるかどうかを見分けることができる<認識>というレベルでは「顔で20ピクセル」確保できていればよい。

③合理的疑いの余地なく個人を識別するために、十分な詳細情報が取得できる<識別>というレベルでは、撮影が良好な環境下では「顔で40ピクセル」、撮影が厳しい環境下では「顔で80ピクセル」確保する必要がある。

 

【AXIS M1065-L】での検証

ではここで実際に、AXIS M1065-Lで被写体が何ピクセルで撮影できているかどうか確認してみよう。「ピクセルカウンター」と呼ばれる機能を利用してピクセル数を確認する。

 

設定メニューの中の「システム」タブより「向き」のボタンをクリックする。

 

「三角定規のようなボタン」をクリックする。

 

ここで「②のヒト」に黄色い枠を合わせてみると、X軸が96ピクセルで、Y軸が126ピクセルであることが分かる。よって、<識別>に必要な80ピクセルを満たしていることが分かる。

 

続いて、「①のヒト」に黄色い枠を合わせてみると、X軸が46ピクセルで、Y軸が65ピクセルであることが分かる。撮影環境が良好であれば、ヒトの<識別>ができる可能性がある。

 

最後に「③のヒト」に黄色い枠を合わせてみると、ギリギリ20ピクセルあるかどうか…というサイズであった。認識というレベルでは、ピクセル数を確保できている可能性がある。

 

日本における基準として

日本における撮影の基準としては日本防犯設備協会が一定の基準を定めているので下記URLを参考にして欲しい。

http://www.ssaj.or.jp/

 

カメラ本体にピクセルカウンターの機能がない場合

ネットワークカメラ本体に「ピクセルカウンター」などの画素数を測る機能がない場合、windowsのペイントなどを使って、ピクセル数を確認することも可能だ。

ペイントで撮影した画像を貼り付けし、顔の部分を「選択」で囲うと、左下にピクセル数が表示させることができる。

 

注意点として

 

①<顔認証>システムの基準とは異なる

今回、1つの指標として、個人を<識別>できる顔のサイズが80ピクセル以上必要であることを紹介したが、これはあくまでも欧州基準である。

現在、各メーカーから「顔認証システム」などの認証系ソリューションが開発・リリースされているが、それらのソリューションではメーカーが個別に「顔認証するために必要なピクセル数や部屋の明るさ」などを定めているため、導入前にはシステムメーカーへの確認が必要となる。

 

②モニタのサイズとに分割数に注意する

今回、紹介したピクセル数で、顔が<検知>または<認識>、<識別>できるかという指標はあくまでも、撮影したデータ自体の問題である。肉眼で見た場合に「ヒトを誰であるのか判断する」ためには、そのデータを表示するモニタも非常に重要となる。

つまり、カメラ自体では高解像度で撮影・録画していても、モニタが小さくて多くの画面分割表示をしていた場合、閲覧者は直感的にヒトを見分けることが困難になる。モニタリングをしながら特定のヒトをチェックしたい場合は、ある程度、モニタのサイズを大きくしたり、画面分割数を少なくするなどの対策が必要となる。

実際には閲覧者が「ヒトが撮影できている」と認めるかどうかは、実機で実際に撮影する方法が最も手早いが、事前におおよその撮影イメージを行う際に上記のピクセル数による基準を覚えていただけると参考になると考えている。